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健康生き生き

vol.5
自己投資

いのちのサポートとしての定期健診

 陰暦十二月は師走(「しはす」または「しわす」)といったが、「しわす」 を辞書の『広辞苑』でひいてみた。師走坊主、師走びくに比丘尼、師走浪人な どと、せわ忙しい歳末には布施がいただけないお坊さんや尼姿の芸人、仕事 なく落ちぶれ姿の浪人を表す人物像の言葉が出てくる。

 ところが、今日では歳末やクリスマス近くなると、方々の福祉法人や難 民救済団体、キリスト教会からクリスマスにちなんでの募金や献金を依 頼する印刷物が私の所にもたくさんくる。どれを読んでも、それなりのニ ーズがある。師走は、日本の今日ではボーナス月でもあるので、銀行同 様、ボーナスを狙っての募金活動である。

 タクシーに乗って運転手と話すと、バブルがはじけて、たいへんな不況 であるという。とくに、輸出業業者などは、この円高では、薄氷をふむよう な心細さで歳末を迎えているに違いない。

 さて、皆さんは健康の良否はあっても、幸いに生存を許されて年越しさ れると推察する。一年一回の健診という誘いを皆さんはしばしば受けられ ると思うが、つい忙しくて受診できなかったという人が多いのではあるまい か。日本は世界のどの国よりも健診システムが発達しており、当人がその 気になれば、費用もほどほどで、また、老人保健法でも健康診査が受けら れる。だが、これという自覚症状がなく、元気で働いてきた人は、今年のど こかで受診しようと思っていたのが果たされず、暮れになってしまっては忙 しいので、来春にしようと思っておられるかと想像する。

 病人だけが医師を訪れた昔と違い、今日では病識がなく、健康感があっ て何不自由なく働いていても、受診し検査を受けると、時々ガンが発見され たり、肝炎にかかっていたことが分かったりする。また当人は知らないで糖 尿病にかかっている人もある。それが検査結果で分かる。実際はすでに何 かの疾患にかかっていても、当人は何の自覚症状も感じない人のことを「見 かけ上の健康者」という。そして食欲はあり、疲れず、よく眠れて健康感があ るという人の中に、かなりの数の病人が確かに存在する。

 定期健診と人間ドックとは表現は異なるが、内容は基本的には同じであ る。人間ドックといった場合は、やや詳しく調べる。入院して調べたりするの で、検査内容が少し多くなり、また診察する医師が内科以外の科の医師も 含むといった違いの程度である。

 今では自動化分析装置を用いて少量 の血液で数多くのテストが短時間 のうちに分析され、データはコンピューターですぐに打ち出される。そのため、 一日の外来で成績表が出るので、そのような健診を外来ドックと呼んでいる。

 成人病としてのガン、高血圧、糖尿病、心臓病、肝臓病や肺の慢性疾患など は、病気にかかった初期または中期には症状をあまり示さないことが多い。定期 健診やドックさえ受けられれば、早く実体が浮き出され、早期に発見された 成人病の大部分はたいていはコントロールされるので、無駄な死亡が防げる。

 一年間忙しく働いて健診を受け損なったという人も、手帳にはゴルフのコン ペや総会の期日、クラス会の旅行などがちゃんとマークされ、実施もされてい る。皆と行動する約束よりも、自分一人の選択で決めて行える健診を皆さんは もっと大切に考えてほしい。このいのちのサポートとしての健診は、年末でも ぜひ受けてほしい。ボーナスの有効な投資よりも、もっと大切なのは年末の 自己投資である。

聖路加国際病院理事長(関西学院旧制中学部卒)
日野原重明著「いのちの器」より



 

 

 





 
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