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健康生き生き

vol.15
老いに再び光を

医学の進歩で取り戻す「心の窓」

 十月十日は目の愛護デーだ。目に不自由のない人には、目のありがたさは感じにくい。それはちょうど、人間は空気や水なしには生きられないのに、日常生活の中にそのありがたさを忘れがちであるのと同じである。

 たいていの人が、老いの兆しをまず感じるのは、四十五歳前後から老眼が始まるときである。老眼というのは、目のレンズの調節力が下がり、本を読むとか近くのものを見ようとするときに、レンズの厚さを調節する力が落ちてきたために、対象に目の焦点がよく合わさられないことをいう。

 自分も老眼鏡をかけるトシになったのかと思うと、だれしも何となくわびしい思いがする。この年代のころの婦人は、月経が閉止する時期とも一致するので、婦人の場合は、加齢を意識してとくに寂しい気持ちになるようだ。

 老眼になる年代の人は、目のレンズである水晶体が曇り、しかもこれが進行すると、ものがよく見えなくなる。そのために日常生活はたいそう不自由なものになる。このように目のレンズの濁りが進行した人は、眼科医の手術を受けて人工レンズに取り換えてもらえば、視力を取り戻すことが可能である。

 老人になると、白内障は遅かれ早かれ始まるので、今日のように国民の寿命が延びて高齢者が増えると、白内障の患者の数も増え、日本でも年々その手術数は増す一方である。

 長い間白内障でものがよく見えなかった人が、手術を受けてそれがうまくいくと、術後すぐものの形がよくわかり、色も鮮やかに識別できるので、だれもが予想以上の感激を覚えるのである。

 医学の進歩した文明国に住む老人はこの手術の恩恵に浴くせるが、眼科医のあまりいない国では、白内障のために視力が失われたままに置かれた老人は不幸な余生を過さざるを得ない。

 白内障の手術は、四、五年前までは病院に二週間くらい入院し、手術後は何日も眼帯で目を覆い、患者は絶対安静を命ぜられていたものである。ところが人工レンズの取り換えという簡単な手術になった今日では、一泊二日か、日帰りの外来でも手術ができるようになった。驚くべき医学の進歩である。

 日本には眼科医の数は約八四〇〇人おり、医師の総数約二十一万人の大体二〇分の一にあたる。日本では、戦前はトラコーマという目の伝染性疾患のため、目ヤニが出、視力が下がり、ひどいと失明する人があり、その数は非常に多かった。しかし戦後は衛生状態が改善され、国民の栄養もよくなって、この病気がほとんど消失した。昔はトラコーマにかかるものの数はおびただしかったので、開業する眼科医は地方にもかなりおられたのである。

 最近では、老人人口が増えてきたので白内障や緑内障を病む老人の数が、トラコーマに代わって増えてきた。したがってその治療や手術に眼科医は非常に忙しくなってきた。

 さて、目は心の窓ともいわれる。目はお互いに相手を見合う大切な器官であるとともに、その視線の中には、愛やいとおしみの情が鋭く流れるという不思議な作用がある。人と人との目によるコミュニケーションをお互いにもっと大切にしたいと思う。





聖路加国際病院理事長(関西学院旧制中学部卒)
日野原重明著「いのちの器」より



 

 

 





 
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