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健康生き生き

vol.15

「痴呆」の気付かれ方

大井 玄

 昭和三〇年代、四〇年代ではある人が痴呆状態にあると気付かれるのは、典型的には他人迷惑な被害妄想を現すからでした。例の、嫁が自分の財布を盗ったというものです。
 お嫁さんは、姑が「痴呆」である、つまり直前の記憶さえなくなっていると気付いていないのが普通ですから、まず訝しく思います。それが繰返されると姑が意地悪をしていると思います。無理もありません。夫に言いつけると、最初は取り合わなかった彼もおかしいと思い、医療福祉機関に相談したりして、痴呆が気付かれる。ここらで気付かれると人間関係はしばしば救われます。
 しかし近年ではそんな単純な症例ばかりではありません。私の診た例で、こんな人がいました。彼は腕のいい大工だったのですが、六十代半ばに脳出血で左半身不随になり、車椅子で生活していました。「左」ですから言葉にはあまり影響がありません。ゆっくりですがきちんと喋るのでした。奥さんも同様の病気で、すでに寝たきりになっています。したがってそこには毎日ヘルパーが来て家事をし、訪問看護師も毎週訪れていました。
 さて、彼は高血圧の薬と脳障害によるテンカンを抑える薬を飲んでいました。しかしどちらの薬もきちんと飲んでくれないのです。そのため時々腕がけいれんしたりすると直ぐ救急車を呼んで入院してしまう。また頭がいたいといって降圧剤を勝手に服用するものだから「低血圧」でへたったりする。また入院です。
 訪問看護師は薬局に頼んで、毎回服用する錠剤を一緒の袋にいれて飲み忘れがないよう工夫しました。それでも薬の飲み方はチャランポランなのです。テンカンの薬は二種類なのに一種類はどうも飲み忘れます。薬の余り具合から、また血中の薬物濃度からそれは明らかです。しかし彼はニコニコ笑いながら、薬はちゃんとのんでいると言い張ります。看護師は次回の訪問まで服用する分だけ残して、「のんでいない薬」を持ち帰ります。帰るや否や電話がかかってきて、薬がなくなって不安でしょうがないと泣き声を出すのです。もちろん薬を持ち帰るときには、その理由を説明し、彼もウンウンとうなずいていたのです。
 訪問看護師が泣きべそをかき始めた頃に、彼の知力を調べました。中程度から重度に近い知力低下が見つかりました。彼は薬の飲み方について説明を受けても、それを理解しないばかりか、忘れてしまうのでした。
 「妄想」もはっきりしない、「異常行動」もはっきりしません。しかしこんな例では、「痴呆」であることを周囲が意識しないかぎり、人間関係が悪くなります。看護師は腹がたたないようになりました。



 

 

 





 
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