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健康生き生き

vol.24

森のいやし

大井 玄

 私の住んでいる所は世田谷区の東端ですが、近年マンションの新築がさかんです。さてその広告を読むと、駒場公園、駒場野公園といった緑の多い場所が、あたかも隣にあるような表現がされています。なぜ私たちは樹木や森に惹かれるのでしょうか。
 林野庁が発足させ、私も顧問をつとめる「森林セラピー研究会」は、森のいやし効果を解明しています。その成果を読みますと、それは生理・心理的、さらにはスピリチュアルな「はたらき」であるように感じます。
 いやすとは、病をいやす、渇きや飢えをいやす、悩みをいやすなどから窺われるように、本来あるべき健全な状態から心身の状態がずれたり切り離される場合、これを元に戻すことと見えます。換言すれば、自然なつながりのなかでバランスよく生きていた人間がそのバランスを崩すとき、その本来的なつながりを回復させることと申せましょう。
 森林セラピーは多彩な効果をもつらしいですが、森に入るとやすらぎを感ずることは一般に認められており、心理的作用の存在が察せられます。子どもに話を限っても、自閉症や知的障害の子についての観察は、現代社会が森とのつながりを断ったことによって喪失したものの大切さを感じさせます。
 たとえば精神遅滞を伴う自閉症児は、多動、自傷行為やパニックを起すことが多く、親はその対応に困ります。しかしある森林療法を行う知的障害者校正施設に入所した子どもの記録によれば、山林作業に参加して一ヶ月ほどたつと、作業後はパニックがなくなり、やがて多動行動も減り、精神安定剤の量も1/3になりました。
 また別の知的障害者は、いずれの施設にも適応せず、暴力や他傷行為が際立っていました。しかしこの男性は森林療育を受けるようになると、他傷行動がなくなるばかりか、さらに具合のわるい重複障害者の介助やいたわりを示すようになり、皆で作った花壇の水撒きなどを自分の仕事として引き受けるようになっています。
 さらに別の知的障害者は、精神科への入退院を繰り返した人だったのですが、森林療育施設に入所当時は多食他飲、不眠、深夜の徘徊、施設の明かりの点灯、石鹸や紙などを食べる異食、逆立ちを長時間繰り返すなどの問題がありました。しかし野外活動を経るうちに異常行動が減少し、周囲との交流を求めるようになり、歌ったり、植物や樹木の名前を聞いたりするようになりました。それどころか報告者が雨に濡れながら仕事をしていたとき、フードをかけてくれる心遣いを示すほどになりました。
 北欧やドイツでは森林療法や森林生活を通じての教育はさかんですが、上述のような事例を見ますと、森林療法とは、人間が森から離れてサバンナに移った時に失ったつながりを回復させることのような気がしてまいります。
 人間は普通自分が生かされているつながりを忘れています。しかし空気とのつながりがなければ十分以内に、水や食物とのつながりでは数日、数週間後に死にます。森と私たちのつながりとは何なのでしょうか。



 

 

 





 
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