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健康生き生き

vol.26

ヒトを生かすトリ

大井 玄

 この頃鳥から人間に感染するインフルエンザの話が出ない日はありません。東南アジアで何人、犠牲者が出たとか、WHOによる警告とか、ワクチンや治療薬との準備状態、など。
 もちろんインフルエンザを警戒する心理には第一次大戦直後のスペイン風邪の記憶が影響しています。その感染者数は千万から億の桁と推定されていますが、犠牲者の拡大には、多数の兵士が戦場から故郷に帰るという人間の移動が寄与していました。したがって、交通手段が当時とくらべてはるかに発達し、人の往来も激しくなっている現在は、さらに急激な流行の拡大に備えなければなりません。それにはインフルエンザに感染した鳥を殺し処分するだけではなく、ワクチンを用意し、治療薬を手元に置いている必要があります。
 最近、動物愛護家でもある生態学者からこういう苦情を聞きました。
 「ヒトという生物は実に残忍だ。トリインフルエンザ・ウイルスは、何千万といる野生のトリの間で流行している。野生のトリの一部がヒトの飼育するトリと接触があることは避けられない。途上国では野生のトリが庭先にやってきて、ニワトリとアヒルが一緒に餌をつつくことは日常的に見られる。ところが一部の飼育鳥に感染例が見つかると、飼育場のトリは何万羽でも皆殺しにされてしまう。今年だけでも何百万・何千万の飼育鳥が殺されただろう」
 彼女によれば、ヒト科、ヒト属のヒトという種類ばかりが地球上にはびこって、地球環境を破壊し、他の生物種を絶滅させている。ヒトという動物種は、他の生物種の存続に配慮しないばかりか、同じ種であっても「先進国」と「途上国」を区別して、先進国のヒトは途上国のヒトが生きようが死のうが無関心だ。だから八億のヒトが飢えているのに、日本という国では食糧の三分の一は捨ててしまう。
 私は反論しました。
 「では、ヒトはどうしたら良いのかね。予防措置を講じてはいけないというの?」
 彼女はすこし頬を紅潮させて答えました。
 「いいえ、そんなことを言っていません。交通手段の発達とヒトの移動により、地球は相対的にますます小さくなって行くし、野生のトリと飼育のトリを完全に引き離すことも不可能でしょう。感染した飼育鳥を殺す必要があることも判ります」
 「それなら、今のやり方でしょうがない」
 「私が言いたいのは、ヒトは、殺される他の動物をしっかり見るべきだということです。よく見て、ヒトが「健康に生きる」ために殺す無数の動物の痛みの万分の一でも感じて欲しいのです。その感覚がないと、地球の今の生態系が破壊されるばかりか、ヒトの将来だって保証されないことを生態学は教えています…」
 私はその時すこし酔っていましたし、彼女の論理がよく理解できませんでした。しかし何か不吉なことが起る気がして内心つぶやきました。「それでは俺のインフルエンザ予防は、規則正しい生活、十分な睡眠と外出後のウガイとしようか」



 

 

 





 
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