E-News & Songs 5月例会活動報告 

5月リーダー 宮武捷二

5月例会はジャパンタイムズ社説(4月12日)
Japan step up to become a “full global partner”
 ―日本がフル・グローバル・パートナーへ― を取り上げました。

 

 

今回の日米首脳会談で岸田首相は、今後の日米関係についてかなり広範囲にわたる事柄についてバイデン大統領と率直な意見交換と合意を見たとのことですが、これらについて参加メンバーで論議し、皆様の出された感想・コメントを以下紹介いたします。

A氏
1.日米会談についての各自の疑問とそれに対する見解は
1-1経済政策・・・日本は米国へのコミットメントを明確にしているが、米国はとくにモシトラの場合に根底からひっくり返る事情が予想されており、心配である。日本のGDPが世界第二位時代であれば、資金的にも対応可能であったが、今は3位から4 位へ、さらにG7からも脱落の恐れのある経済力の国である。しかも財政赤字は1100兆円を超しており、財政バブルであり、 長期的な成⾧力は失っている。物価は今や低開発国並みで、為替レートの実力(日本の経済力)は弱体化。金利は上げられな い。上げたら金融システムは崩壊する=日本は崩壊する。なんという30年であったのだろう。その中で米国と肩を並べるよう な発言は可能であろうか。

Japan cannot step up to become a full global partner!

1-2 外交政策・・・ウクライナの例を見てもわかる。又、イスラエルの例を見てもわかる。米国もロシアも同じスタンスに変わり がない。であるのに、一人米国寄りの発言を続けている。日本の独自の立ち位置を明確にしなければならない。日本の立ち位 置は東南アジア諸国と連携して、互いに成⾧してアジアパワーを確立することではないか。そのためになすべきはアジア諸国 との連携強化が重点ではないか。ヨーロッパのような連帯を確立していくことが必要である。しかしアジア諸国は強権国が主流であり、中国寄りの流れが強い。

1―3 軍事政策・・・日米同盟の強化を述べるが、国内法規では軍事力を生かせない法規があることを忘れている。そうしたことの 整備と共に、中国の国力に抑止力として耐えうるような、自国防衛策が同時に必要である。

上記3つの政策ビジョンが必要である。日本は独自に自国を守る体制を早急に取らねばならない。それは日本の憲法改正と軍備の強化である。

2.日本の備えはどうあるべきか。

2-1防衛・安全保障協力の強化(strengthening our Defense and security cooperation)

尖閣列島を含む日米安保条約の履行を確認し、日本の防衛力と役割を抜本的に強化するとし、GDP2%へ増額 するなどと約束している。又、普天間基地の建設を約束している。 しかし、 実際の戦争事態になったときの法的整備は全くされていない。憲法改正、自衛隊法の改正が必要であり、普天間基地問題をどうするかの国内説得が必要である。又日本の経済力の強化が必至である。

2-2宇宙における新たなフロンティアの開拓(Reaching New Frontiers in Space)
与圧ローバの提供などを約束している。そして、日本人の月面上陸を実現しようとしている。しかし, その目途は本当にたっているのか。宇宙開発についての⾧期的な戦略が明確でない。 ’

2-3イノベーション、経済安全保障および気候変動対策の主導(Leading on Innovation, Economics Security, and Climate Action)これらに関し AI、量子技術、半導体、バイオテクなどの次世代の重要侵攻技術の開発及び保護を、研究交流、民間投資、及び資本調達で実現する。半導体についてグローバルなサプライチェーンの強靭化を図る。又、包括的なサプライチェーンの強化(鉱物資源)を行う。エネルギーサプライチェーンを促進して、GXの推進を図る。核融合への投資、LNGの供給など。パンデミックの予防のためにシステムの強化促進、グルーバルな健康安全保障の確立などがうたわれている。 しかし以下4点私見を述べる。

① イノベーション政策が明確ではない。日米の具体的な協調プロジェクトが列挙されているが、国内での大きな方     向性の合意は 見当たらない。IT化が日本中のエネルギーになっていない。

② 経済進展政策が明確ではない。日本経済を伸ばしていく経済強靭化戦略が 明確でない。日本の経済政策は論理が欠落している。今や、財政バブルであり、低成⾧危機である。経済政策の理論化とビジョン明示が必要。ソフトビジネスの強化、ハードビジ ネスの再活性化、についてのビジョンが必要。私は経済政策を改めて勉強しなければならないと反省している。

③ エネルギーの脱炭素化について、国内的な合意は確立していない。Renewable Energy or Green Energyの強化とNuclear powerの活用。徹底したGXと核エネルギーの新たな技術(既に存在しているのに業界が阻止している技術は存在している)の 導入

④ パンデミックや医療についても方向性だけで国内の抜本的な合意はできていない。

2-4グローバルな外交及び開発における連携(Partnering on Global diplomacy and Development)

日本の常任理事国となることの支持表明。特に中国との間の率直な意思疎通の重要性を強調。南シナ海問題を提起。 ASEANのパートナーと協働すると決意。台湾海峡の平和と安定を維持するとする。QUADをコミットする。北朝鮮の 非核化。ロシアのウクライナ問題。イスラエルとパレスチナ人問題。核兵器のない世界の実現。外交努力の共有は望ましいことであるとしている。しかし、外交が重要であるにもかかわらず、主体的な行動方針は日米一辺倒である。独自色がない。中国と路線は別としても交 流を深めるスタンスはもっととれるはず。

2-5人と人とのつながりの強化(Fortifying People-to-People Ties)

人的交流の強化。フルブライトジャパンなどの組織の継続支援強化。女性の指導的立場の強化。ジェンダー平等と多様 性、エンパワーメント強化。 • 女性の役割強化や多様性対応強化は日本の精神構造の変革を必要としている。そのような姿勢が極めて不十分である。 強いリーダーシップが必要である。ここで岸田首相が改めて自民党を再編して指導してもらいたい。
3 結語(Statementから)

• Today, we celebrate the enduring friendship among our peoples-and among ourselves –and pledge to continue our relentless efforts to ensure that our global partnership drives future peace and prosperity for generations to come • JX 即ちJapan Transformationこそ必要である。

B氏
Full global partner Really?!    

私は岸田首相が米国で何を話しバイデン大統領に何を約束したかよく知らなかったのでバイデン・岸田両首脳の共同声明を原文で読んでみました。それは大変分量のあるもので総合的かつ具体的な内容でした。その親密で重要かつ進歩的な内容は約80年前の両国の関係を考えるととても現実とは思えない気がします。私の今回の発表は以下となります。
A 驚きの内容 
こんなに広くて、深くて、先進的で高邁な理想に今の日本が対応できるのか? 日本の専守防衛原則上問題はないのか?
①広くて深い関係を示す
・防衛・安全保障の強化
・宇宙最先端への到達
・技術革新の先導
・経済安全保障の底上げ
・気候変動対策の加速
・世界規模の外交・開発の協力
・人的絆の強化
②協力関係の核心は高邁な理想
・共通の問題(敵)に対する協力

・インド・太平洋を含み自由で開かれた世界の実現
・国際法の遵守、人権、主権、領土等の保全
・問題解決のための装備の充実

B 印象とその内容
1900年ころから今日まで日本に関する米国が描いてきた筋書きの是非は別として、そのストーリーは実現してきている。このことを背景に考えると、以下に記した印象は私を不安にさせる。 
①奇妙なほどの親密関係
 日本防衛のバイデン大統領によるコミット
②既視感・・・役者の入れ替わり
太平洋戦争時    (中国+)米国 対 日本
現在(今後さらに)(日本+)米国 対 中国

③類似性・・・代理戦争
現在    ウクライナ 対 ロシア
台湾有事 米国+日本 対 中国 

C 要検討事項
①今後、弾薬生産・補給、戦艦・航空機修理が日本の民間企業で実現すれば、従来は米軍の駐留基地であったものが、日本が支援する軍事拠点に格上げとなる。専守防衛しか許されない国が日本から出撃する米軍の攻撃力をつけさせて、あたかも問題ないかのような印象です。

②日本の防衛能力によって支える米国の延伸された抑止力の強化を進めることが決定的に重要と日米は再確認しました。ここで言う日本の防衛能力の意味するものは何か?それが岸田首相が表明したように反撃能力のことであるとしたら、専守防衛の原則を守れないところで日米の軍事協定は成り立っているということになります。

D 米国側の評価
今回の声明での第一の要点は防衛・安全保障の強化であることは間違いありません。その中にあって声明から読み取れる米国の日本に対し評価しているのは防衛予算をGDP比2%への倍増、反撃能力の保持、民間による米軍のミサイルの製造・補給、戦艦・航空機整備・維持の可能可です。これらは米軍の攻撃能力(抑止力とも呼ぶ?)の増強に資するものです。しかしこれらはglobal partner for futureは要因ではなく、本当はその目的を示している気がします。


E 結び
先の戦争は日本陸軍による法律と原則を無視した既成事実の積み重ねでなし崩し的に始まったことを考えるに、それと今は異なると言えるのでしょうか。
右に掲げた共同声明の結びにあるように世界に法と秩序に資することを喧伝する前に自国の憲法、従来の原則を遵守するのが先です。これは民主主義国家の宰相でなくても誰でも知っていること。

「日本の備えはどうあるべきか」
対中国面
米中の武力衝突は日本に回復不能的な損害が生ずることは容易に想像がつくし、それが短期で収束する可能性が大きいとは思えない。上記を前提とするならば日本の少々の武器で何とかなる問題ではない。端的に言って米中の台湾有事による武力衝突は日本の死を意味し、これは絶対に避けなければならないことである。


それ故、日本は米国日本州ではなく、外交的独立、施策の独立を軸に米中の衝突回避に重点を置くべきである。米国の属州根性一本槍の施策は米国が喜べども、日本は自身の存立を失う危機に立つことになる。

対北朝鮮面
核攻撃の可能性はあるものの、「北」を究極的に追い詰めない限り「北」からの核の先制攻撃はあり得ないと私は思う。そのため第一になすべきはそうならないようにすること。


短期的な解決は見通せないし、likemindedな同盟国は必ず現れるので長期、超長期で解決を図ることが重要。反射的で仕返し的な対応は意味がないばかりか、危険水位を上げることにしかならないと考えます。

「日本の備え」は、①絶対に武力衝突/決定的に追い詰めることは避けるという確信的政策、②長期的かつ一貫的姿勢③独立した思考と外交。

共通
(a) 「反撃能力」

その保持にはそもそも専守防衛の点で問題がある。また、その軍事効果は残念ながらいか程のものでもないないのに、世界から認められている日本の戦争放棄と専守防衛の精神・姿勢に疑問を持たれ、日本の評価を毀損し、費用負担と偶発事故や単純ミスによる不慮の外国への先制攻撃を含めた危険を生じさせる。「反撃能力」は保持を正当化できる理由はどこにも見当たらない。
(b)核武装
核関連を含めて米国と同盟を結びつつも日本は自律的であるべき。日本が今後も米国の核の傘下から外れることはほぼ無いことは確実。東西対立が終焉する前に米国が日本との同盟から離脱ことはないでしょう。その終焉の時をもって世界は本当に非核化に向かう。このように考えれば、今ここで日本が少々の核兵器を持つ意味はまったく無いばかりか、保有することに際して発生するありとあらゆる負担、危険が生ずるだけ。控え目に言っても日本の核武装化は賢明な策とはならない。東西対立を解消するのが安全保障問題を解く要と認識して、政治、経済、文化、スポーツとありとあら行く分野を通して全力で当たることが、危険すぎる核の現状を緩和できる方法と考えます。
これ以上の核の緊張は、全人類の「即死」を早めるだけ。

 CDE

岸田首相・バイデン大統領は日米共同声明を発表し日米同盟は前例のない高みに達したと強調し、両国はあらゆる領域、レベルで共働することを確認し、広範囲にわたる領域における協力を促進するとしている(日米同盟、経済、グローバル外交、人的交流、等々)。

これらを読む時、我々にとっての重要な関心は日本の経済力の回復、外交力と安全保障・防衛力に関する事柄に収斂していかざるを得ないと思われる。ウクライナとイスラエルで進行する戦いの現実、中台関係が孕む日本の防衛と地域に対するより重い責任と役割を担わねばならい事を改めて考える機会となった。紛争に拡大する可能性のある危機に対処する事態に巻き込まれる危険性とそれを解決する覚悟と能力を備える必要がある。

B氏の意見を真摯に受け止め深く検討すると同時に、時間的な余裕は少ないと思われるが国際場裡において日本独自のしたたかな外交を展開できる為の能力を高め、それを支える現実的な抑止力を養うことを同時並行的に現実の場面で積み重ねる必要があると思う。その為には現在の国内の地方利益代表者然とした代議士でなく世界における日本の方向性を指示し牽引出来る私利私欲から離れた、日本のリーダーとして横断的に機能する政治家集団、学者集団、それを具体化する官僚集団を必要としている。それを実現するには取敢えず「より少ない悪をとる」原則を発揮して国政選挙に臨み、一方、喫緊であり同時に、長期的な基盤として現在の教育システムを変革し広い柔軟な思想と識見、高い倫理性を備えた志操堅固な愛国士を育てる必要がある。その為には先ず我々一般国民が政治家集団に対して持つ高い要求水準を自覚させ、そういう価値観を彼らに共有させなければならないと思う。主権を失うであろう危機に対しては断固として戦う姿勢を表明する覚悟を日頃から持つ事が大事と考える。常に世界で何が起こっていてそれが毎日の生活にどう影響するかを考えることを習慣化する事が最も大事だと思う。