三日月会の6月例会は東アジア貿易研究会理事長の若林寛之氏をお迎えし、「北朝鮮問題の真相を探る」というテーマでのご講演で92名の皆様にご参加いただきました。誠にありがとうございました。

【ご講演の概要】

三日月会の6月例会は東アジア貿易研究会理事長の若林寛之氏をお迎えしました。「北朝鮮問題の真相を探る」というテーマでのご講演で92名の皆様がご参加くださいました。ありがとうございました。

 東アジア貿易研究会は日本と北朝鮮のビジネス交流を支援する民間団体で、北朝鮮の対外経済省(国際貿易促進委員会)、東京では朝鮮総連(経済局)が交渉相手です。しかし、現在は北朝鮮に対する厳しい制裁によって経済交流は完全に停止されており、情報収集などの活動を続けているそうです。

 北朝鮮については度々驚くようなニュースが報道され、そのたびにどのような国なのかをもっと正確に知りたい方も多いのではないでしょうか。講演からいくつか印象に残ったことを報告します。

北朝鮮が金正恩体制になって6年目になりますが、いまだに朝鮮戦争休戦時のままの状態にあり、米国とは政治的軍事的な対立関係が続いています。このため北朝鮮は「核とミサイル」を背景に米国と交渉し、国家の存続と金体制の維持を図ろうとしています。

 北朝鮮は国際社会から孤立をしているような印象をもちますが、国連加盟国の166カ国と国交があります。最近のピョンヤンの高層ビルや近代的な街並みの映像を見ると驚きますが、韓国と北朝鮮の一人あたりGNIを比較すると221と両者には大きな経済格差があり、統一の難しさが容易に推察できます。

 北朝鮮の最大の課題は経済強国の建設です。金正恩体制になって以降、北朝鮮は社会主義計画経済を堅持しつつ独自の改革開放策に取り組んでいるそうです。すべてを国が決めるのではなく経済活動の権限を農民や工場経営者に移譲し、市場(イチバ)での自由経済活動を通じ経済の活性化が進んでおり、いまでは新興富裕層が生まれているそうです。

 中国と北朝鮮は血盟関係にあると言われます。中国の国共内戦では金日成率いるパルチザン軍が中共軍を支援し、朝鮮戦争のときは中国が北朝鮮を支援し、現在も中朝は軍事同盟関係にあります。経済面でも中朝は結びついており、北朝鮮の貿易の大部分は中国です。中朝国境の鴨緑江と豆満江を挟み中国側にも朝鮮族が古い時代から住みついており、彼らの経済活動は河を挟んで一体化しており、経済制裁が効かない生活圏となっています。中国からパイプラインを使って原油輸出も継続しています。中国にとってはこの国境を接する朝鮮半島の安定を維持することが政治の最優先課題であり、そのため中国は米朝間の話し合いを進めたいところです。

 日本と北朝鮮の関係についても我々はもっと知る必要があります。朝鮮半島を植民地化し、中国へ侵略したことへの反省の上に立って、現在の北朝鮮経済をみると、そのインフラや産業基盤を築いたのは日本であり、未開の地を切り拓いた日本の企業とそれを率いた産業人や技術者であったことを知りました。太平洋戦争に突入するとともに北朝鮮は兵器工業化へ邁進します。そして日本は敗戦を受け入れ日朝関係は断絶し、その後拉致問題の悲劇と核とミサイルの脅威にさらされ、今日に至っています。

今後日本が北朝鮮とどう関わっていくか。若林氏は日朝が対決するのではなく、侵略した歴史を反省し、北朝鮮の経済建設にもう一度協力することによって、あの国を東アジアの一員として受け入れていく道を選ぶべきだと言います。日本のリーダーは東アジア全体のあるべき将来ビジョンを描き、その中で日本が果たす役割をしっかり考えることが重要ではないか、との見解でした。

いままで漠然と理解していた北朝鮮のひとつの国としての形が見えてきたような気がします。今後の報道を理解するときの基本知識をつけていただきました。(以上)

【以下ご案内文】

 三日月会6月度例会は、関西学院同窓会東京支部会員で、東アジア貿易研究会理事長の若林寛之氏に「北朝鮮問題の真相を探る」と言うタイトルで、ご講演賜ります。

「核とミサイル」を振りかざす北朝鮮を巡り朝鮮半島情勢は緊迫の度を増しています。北朝鮮の金正恩委員長とアメリカのトランプ大統領の国を率いるリーダーとしての資質・思考・政策がいまだ良く分からないこともあり、先行きの不安が募ります。なぜこういう事態に至ったのか、北朝鮮問題の真相に迫るため、地政学と歴史の視点を交え3つの切り口(①北朝鮮の今、②中朝関係、②日朝関係)からこの問題を考えてみたいと思います。

「北朝鮮の今」では、なぜ核とミサイル開発に狂奔するのか、この国で今何が起こっているか、独裁国家なのか、経済や市民生活はどうなっているのかなどを解説します。次に、北朝鮮の暴発を抑える中国の役割が注目されていることから、中朝関係、特に経済の結びつきについて地図を見ながら考えます。そして、日朝関係については、日本による朝鮮半島支配の歴史(日韓併合1910‐45年)を振り返り、北朝鮮の社会経済基盤の建設に日本企業がいかに関わったかを検証します。是非とも多数の皆様のご出席を賜りますようご案内申し上げます。

日  時 :2017621日(水曜日)12151330

場  所 :関西学院大学東京丸の内キャンパス ランバスホール

千代田区丸の内1-7-12 サピアタワー10階

      サピアタワーオフィス3階受付前に「三日月会受付」(11:3012:10)を設置。

会  費 :1,500円 (軽食は11:30から受付時にお出しいたします。)

講  師 :若林寛之(わかばやし ひろゆき)氏 東アジア貿易研究会理事長 

経歴:関西学院中・高・大(経済1965)・院(経修士1967)卒。ジェトロ(日本貿易振興機構)に37年間在職、その間にロンドン、ニューヨーク、ナイロビに駐在。ジェトロ退職後、国際貿易投資研究所(ITI)を経て、JICA専門家でエジプト通産大臣の輸出振興アドバイザー(カイロ駐在)。20097月から現職。政府の立場上ピョンヤン訪問はできませんが、ソウルや中国の国境沿いの都市、朝鮮族自治州などへ毎年訪問し、北朝鮮ウォッチャーや、時には北の関係者や脱北者と面談。

タイトル:『北朝鮮問題の真相を探る』 

*定員となりましたのでお申し込みは締切りました。ありがとうございました。

尚、同窓会東京支部のkg_tokyo_soumu@yahoo.co.jpへのメール返信並びにFAXでも、申込み受付は出来ませんので、よろしくお願い申し上げます。

【次回予告】三日月会7月度例会はお休みになり、8月度例会は810日に元東京大学大学院理学系研究科教授の早野龍五氏にご講演頂く予定でございます。

以上