7月の例会は7/21、渋谷Bunkamuraで開催中の「ベルギー奇想の系譜」展の鑑賞
でした。12人の会員が参加。鑑賞後は暑気払いで英気を養うことが出来ました。
以下、主催者のHPから一部引用させていただきます。

15-17世紀のフランドル美術
|ボスの世界|ブリューゲルの世界|ルーベンスの世界|

《反逆天使と戦う大天使聖ミカエル》

ぺーテル・パウル・ルーベンス[原画]、
リュカス・フォルステルマン(父)[彫版]
1621年 エングレーヴィング・紙 ベルギー王立図書館

この章ではフランドル地方を中心に展開する「奇想」のルーツをボスの作品に求め、ブリューゲルの時代への継承と、 ルーベンスによる恐れや怒りなど、激しい感情の表出としての新たなる展開を見ていきます。

「奇想」のルーツは、現在のベルギーとの国境に近いオランダ南部の都市、セルトーヘンボスに生まれた奇才ヒエロニムス・ボスの創意に見ることができます。ボスは「地獄」を鮮烈なイメージで描き、闇をうごめく異形たちで埋めつくし、ボスの没後もボス派の画家たちは豊かなバリエーションで高まる需要に応えました。とりわけ「第二のボス」としてその豊かな創意を讃えられたピーテル・ブリューゲル(父)が描いた、 ボス風の怪物や悪魔の世界は、ブリューゲルの鋭い観察眼によって親しみやすさや日常性を増し、一族の画家の作品にも脈々と受け継がれていきます。そして17世紀のバロック美術最大の巨匠ルーベンスは、リアリティと深い感情表現を追求し、恐れや怒りなどの激しい感情の表出としての「奇想」の表現を生み出しました。

  • 《トゥヌグダルスの幻視》

    ヒエロニムス・ボス工房
    1490-1500年頃 油彩・板 ラサロ・ガルディアーノ財団 © Fundación Lázaro Galdiano

  • 《大食》

    ピーテル・ブリューゲル(父)[原画]、ピーテル・ファン・デル・ヘイデン[彫版]
    1558年 エングレーヴィング・紙 神奈川県立近代美術館

     

第 2 章

19世紀末から20世紀初頭のベルギー象徴派・表現主義
|ロップスの世界|ベルギー象徴派|アンソールの世界|

《レテ河の水を飲むダンテ》

ジャン・デルヴィル
1919年 油彩・キャンヴァス 姫路市立美術館

この章では工業化・都市化が進む中で、科学の世紀に背を向け、想像や夢の世界など人間の内面を表現する美術家たちが現れる過程を見ていきます。

1830年、ベルギーは国家として独立を果たします。工業化と都市化が進む中で、1880年代の後半には、科学の世紀に背を向けて想像力と夢の世界へ沈潜しようとする芸術家たちが現れます。ボードレールに敬愛された画家ロップスは、中世からルネサンスにかけて北方美術が好んで採り上げてきた骸骨たちの舞台を近代的によみがえらせました。一方、クノップフの暗示に満ちた静謐な作品を観る者はこの画家の解けない謎にからめとられていきます。画家が抱えていた孤独や怯えが不穏な唸りとなって、観る者に圧をかけ、ついに叫びだす自我を描いたのがアンソールでした。アンソールがよく描いた骸骨と仮面は、隠されるもの・隠すもの・暴かれるものという性質を内包していますが、この関心は、次の世紀のマグリットから現代まで続く「言葉とイメージ」の問題へと展開していくことになります。

  • 《オルガンに向かうアンソール》

    ジェームズ・アンソール
    1933年 油彩・キャンヴァス メナード美術館

  • 《娼婦政治家》

    フェリシアン・ロップス[原画]、
    アルベール・ベルトラン [彫版]
    1896年 多色刷銅版画・紙 フェリシアン・ロップス美術館

第 3 章

20世紀のシュルレアリスムから現代まで
|マグリットとデルヴォー|ヤン・ファーブルと現代美術|

《大家族》

ルネ・マグリット
1963年、油彩・キャンヴァス 宇都宮美術館
©ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2017 E2553

この章では今もなお制作における豊かな源泉であり続けている「奇想」の表現が、現代に受け継がれていく過程に目を向けながら、同じバックグラウンドから生まれる500年の系譜を問い直していきます。

芸術における奇想の表現は時代とともに変化し、20世紀に入ると絵画や版画のみならず彫刻、音、インスタレーションへ領域を拡大しながら浸食していきます。両大戦間にヨーロッパを席巻したシュルレアリスムの運動のなかで、マグリットは既存のイメージを異常な関係性の中に置き、ものの固有の意味を解体させていきました。一方、デルヴォーの絵画やデッサンでは、夢で見るような非現実的な場所に裸の女性や骸骨がさまよい、甘美なエロスに包まれています。こうしたシュルレアリスムの系譜はベルギーの地に脈々と残り、現実から派生する幻想の世界をさらに押し広げていきました。ヤン・ファーブルは15-16世紀の宗教画や歴史的な出来事から主題やイメージを抽出し、しばしば昆虫や動物を介在させながら、過去と現在、男と女、生と死など相対する事象の狭間に触れていきます。

  • 《フランダースの戦士
    (絶望の戦士)》

    ヤン・ファーブル
    1996年 昆虫、甲冑、金網、木材 国立国際美術館
    ©Jan Fabre-SABAM, Bruxelles
    & JASPAR, Tokyo, 2017 E2553 撮影:福永一夫

  • 《生き残るには脳が足らない》

    トマス・ルルイ
    2009年 ブロンズ ロドルフ・ヤンセン画廊
    © Studio Thomas Lerooy, Brussels, courtesy rodolphe janssen, Brussels
    /Photo: Philippe D. Hoeilaart

通常の絵画展とは一味異なる展示会ではありましたが、大変興味深い内容でした。

写真は「なだ万茶寮」での暑気払いのスナップです。