3月度例会は、自身も車椅子を使用し障害者の自立支援活動を続けておられる同窓の認定NPO法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議事務局長佐藤聡氏をお招きし、「多様な人が共に生きるインクルーシブな社会へ」と題してお話を伺いました。36名の方のご参加いただきました。有難うございました。 

 現在日本の障害者の数は800万人近く。最近では外出先で会う回数も増えましたが、2006年にバリアフリー法が成立する前は東京の駅で車椅子が利用できるエレベーターはゼロ。東京では電車を使っての外出はできなかったのです。取り組みは関西のほうが先行していました。2017年には87パーセントの駅が利用できるようになっているのはバリアフリー法の成果ですね

 佐藤さんは岩手県宮古市のご出身です。9歳のときに事故に遭い、車椅子の生活を余儀なくされ、治療後は140人が一緒に生活する寮学校で4年間暮らしました。そのなかでどうして家で暮らせないのかという疑問を持ちます。4年間の隔離された生活の影響は大きく買い物もできない知らない人は怖いというふうになっていました。その後地元の中学への入学を頼みにいったときに君はこの町の子供だからということで入学を認められ、その上、それは他の生徒にも良いことだと言われびっくりしました。入学後はクラスの生徒にも受け入れられ施設とは違う自由な生活を楽しむことができたそうです。

 地元の高校に通いましたが、進学のときに、当時東京では受け入れてくれる大学はありませんでした。関学に連絡を取るとエレベータもトイレもあるとのこと。受験も別室ではなく、普通に一緒に受けさせてもらいました学生時代に障害者の活動をしているなかに頚椎損傷の学生もいて、家族と一緒ではなく友達30人の支援をうけ自立している姿に衝撃を受けます。そこから自立支援に関心を持つようになり、卒業後は重度の自立支援の活動をするようになりました。

 現在DPI日本会議事務局長ですDPI国際的障害者運動のネットワークとして1981年にできた障害当事者団体が集まる組織です。重度の人にも親に頼らず生活できると勧めています。施設に40年間暮らしてきた自立希望の女性を支援して、生活に必要な技術を身につけてもらい家族の了解を得て自立。楽しそうに暮らしていて、親にも感謝されたそうです。

 西宮市には介助制度の交渉に毎週通い認めてもらい、差別解消法が滞っているときは法律成立のためのデモ行進もしました 

 4年前から東京にお住まいです。ここでスポーツ施設の話題に。東京ドームは46000のうち車椅子席は12席。甲子園球場はリニューアルのときに要望を出し11箇所31席できました。ところがアメリカに行くと驚いたことにヤンキースタジアムには車椅子席68箇所 1000席以上もあるのです。ほかのスタジアムも同じでした。ADAスタンダード(Americans with Disabilities Act of 1990障害をもつアメリカ人法)というのがあってそれに則っているですね。日本のバリアフリー法には競技場のことなどはなにも書いていないので世界のレベルに遅れていることに気がついたそうです。アメリカでは、食事もどこでもできるし人間になった気がしたとか。日本ではそうはいきません。

 さらに佐藤さんは東京オリンピックを利用してバリアフリー法の改正を提言しました。東京体育館は車いす席の前の手すりが邪魔になって競技は見えないし、代々木体育館も武道館も同じでした。そこで国際パラリンピック協会のガイドラインにそって作ってもらうように要請しています。新国立競技場は世界に通用するすばらしい施設になりそうです 努力の甲斐あってバリアフリー法が4月からようやく審議されることになりこれからは変わってくると佐藤さんは希望を持っています。障害者にかかわることはなんでもやっていくこと、施策にはかならず障害者の意見をきいてほしい、障害者抜きには障害者のことは決めないでほしいと熱をこめて語られました。障害者とともに暮らせる世界はより強くなっていけるからです。 

 自分が社会に貢献できるのはいまの活動を続けていくことで、西宮では障害者ひとりひとりの支援をしてきましたが、いまは国に対して制度改革を提言していく仕事を頑張っていきたいとのことです。 

 ゴールドコンサートでおなじみの貝谷さんとは学生時代からのおつきあいがあったそうで、この日は貝谷さんも参加してくださいました。ご本人たちの努力と共に母校の受け入れ態勢や支えがすばらしい成果の一助になっていることをしみじみ感じた一日でもありました。

【以下ご案内文】  

 三日月会20183月度例会は、認定NPO法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議事務局長佐藤聡氏をお招きし、以下の内容にて、下記の通りご講演を賜ります。 

「私は9歳の時に事故で車いすの生活になりました。車いすに乗った途端、普通の学校には入れてもらえず、障害者だけが集められた入居施設で暮らすことになりました。なぜ、歩けなくなったら親と離れて隔離された施設で生活しなければならないのか、とても不思議でした。関西学院大学に入学し、重度障害をもつ学生に出会い、家族に依存せずに地域で生活する姿に衝撃を受けました。社会の環境が変わることによって、障害のある私も同じように社会の中で生き、貢献していけるということを学び、障害者運動をはじめました。いまは、政府や国会議員に政策提言等を行っています。特に、東京2020オリンピック・パラリンピックを契機としてレガシーとしてのまちづくりを目指し、バリアフリー法の改正にも取り組んでおります。ぜひ、同窓会東京支部のみなさんに障害当事者の集まりだからできる私たちの様々な活動を知っていただきたいと願っております。」

 是非とも多数の皆様のご出席を賜わりますようご案内申し上げます。                 
                                 
日  時 :2018328日(水曜日)12151330 

場  所 :関西学院大学東京丸の内キャンパス ランバスホール 

      千代田区丸の内1-7-12 サピアタワー10階 

      サピアタワーオフィス3階受付前に「三日月会受付」(11:3012:10)を設置。 

会  費 :1,500円(軽食は11:30から講演前にお出しいたします。

講  師 :佐藤 聡(さとう さとし)氏 

1967年新潟生まれ。9歳で車いすの生活となり、親元を離れて入居施設で4年間暮らす。1987年関西学院大学社会学部入学。ボランティアの支援を受けて一人暮らしをする重度障害者と出会い、障害者の自立生活運動を始める。1991年メインストリーム協会に入り、重度障害者の自立支援、介助制度づくり、バリアフリー運動、アジアや中南米の障害者支援等を行う。2014年からDPI日本会議事務局長となり、国に対して政策提言、権利擁護、バリアフリー運動等を行っている。現在、DPI日本会議(Japan National Assembly of Disabled Peoples’ International)事務局長。日本障害フォーラム(JDF)条約推進委員長。内閣府障害者政策委員会委員。 

講演題目 :「多様な人が共に生きるインクルーシブな社会へ」 

*申込締切2018322日(木)(締切厳守)で、お申し込みは締切りました。

尚、同窓会東京支部のkg_tokyo_soumu@yahoo.co.jpへのメール返信では、申込み受付出来ませんので、くれぐれもお間違えの無い用ようにお願い申し上げます。 

*お問合わせ先:東京支部  FAX 03-5224-6227 

【次回予告】三日月会4月度例会は425日に味の素株式会社の研究開発企画部戦略・事業開発グループシニアマネージャー小林久峰氏をお招きして開催する予定でございます。                                               以上