【ご講演の概要】   

   今や高齢者の3人に1人が認知症になると言われている中で、今後の創薬と治療の展望について、エーザイ株式会社代表執行役の岡田安史氏にお話を伺いました。関心のある方が多く59名の皆様にご参加いただきました。ありがとうございました。

 世界的に見ても、認知症患者は3秒に1人発症しています。特にアジア地域が多く、2050年には約3倍に達すると言われていますが、認知症の創薬は最も難しい領域とされています。エーザイは1990年代に「アリセプト」を発売し、大きく業績を上げましたが、2010年特許が切れてジェネリック薬品が現れ、株価も低迷したようです。今はそれに代わる認知症の薬を開発研究しています。

 「アリセプト」は一定期間進行を遅らせ、症状をよくする「症状改善薬」として機能する薬なのですが、長くて2~3年で効かなくなります。今の創薬は、もっと早期に投与して、進行を止める、あるいは遅らせる「先制医療」が主流です。

 さて、認知症の原因となる「攻撃因子」として、βアミロイド、タウ、反応性グリアなどがありますが、発症する前から脳の中ではそれらの物質が溜まっています。今開発している薬は、認知症状が正常な段階で、脳の中で起きている変化に対して先制攻撃を仕掛ける仕組みになっています。

 病勢を3つのステージに分けると、発症前の正常な段階をプレクリニカルAD(アルツハイマー型認知症)と呼び、発症の1020年前の期間です。この期間の診断方法として、ApoE遺伝子診断、PET検査、脳脊髄検査、CTMRIなどがありますが、対処できる薬がないので保険適応できず、全部自己負担になります。

 発症の1~2年前のステージをプロドローマルADと呼び、この時期になると、「睡眠障害」が発現します。「睡眠障害」は認知症のリスクファクターと考えられています。深い睡眠がβアミロイド等の脳内老廃物を排斥することが知られているからです。このステージでの診断方法として、先に述べた機能的診断以外に質問形式のテストがあります。

 「睡眠障害」の次に発現するのが「行動障害」です。暴力的になったり、妄想を抱いたり、徘徊し始めると、「認知機能障害」の発症です。

   認知症の発症を遅らせることによる医療費、介護費削減効果は多大なものです。2025年には2兆円減の効果が予想されます。

 エーザイでは、世界中のビッグデータを元に、AIを駆使して、認知症ソリューションの新たな取り組みを始めています。

「歩行、音声、描画」の簡単なテストを受けるだけで、認知機能を診断したり、2年後に認知機能が悪化しているかどうかをMRI画像のみで診断したり、多くの自治体と組んで、安心して暮らせる街づくりを提唱したりしています。

 エーザイが世に存在する意義は、認知症に画期的な前進をもたらすことを使命とする、という言葉に岡田氏の熱意が感じられました。

 このあと、質疑応答の時間があり、数人から以下のような質問がありました。

「軽度の認知症にもレンボキサントは効果があるか?」:ある

「脳の変化はどうして調べればいいか?」:PETは効果的だが料金が高く、施設が限られている。脳脊髄検査は危険が伴う

βアミロイドの蓄積と発症の関係は?」:作用する部位によって発症も異なる

「薬以外の方法は?:歩くなどの有酸素運動がいい。生活習慣や食事、睡眠の改善により発症を抑えることができる

「アルコールとの関係は?」:飲んで赤くなり、泥酔になるような飲酒はよくない。過度摂取によって脳の細胞が死に、再生スピードに追いつかなくなる 

 とても参考になりました。ありがとうございました。

【以下案内文】

 三日月会3月度例会は、世界のヘルスケア業界で活躍しておられる岡田安史氏に下記内容にてご講演を賜る事になりました。

岡田氏は関西学院大学を卒業後、カナダの出版社コーポレートナイツ社が選定する「2019年 世界で最も持続可能な100社」に選出されたヒューマンヘルス企業エーザイ株式会社に於いて、一貫して創薬の道を歩んでこられました。

我々も身近に感じる高齢化に伴う多くの疾病、更には世界的に急増する認知症に関して、創薬の最前線に身を置く立場からその治療の展望について語って頂けます。  

是非とも多数の皆様のご出席を賜わりますようご案内申し上げます。

日  時 :2019327日(水曜日)133014451300開場】

場  所 :関西学院大学東京丸の内キャンパス ランバスホール

千代田区丸の内1-7-12 サピアタワー10階

      サピアタワーオフィス3階受付前に「三日月会受付」(13:0013:25)を設置

会  費 :1000円 (小ペットボトルのお茶を用意しますが、軽食の提供はございません)

講  師 :岡田 安史(おかだ やすし)氏 エーザイ株式会社代表執行役

1981年 関西学院大学経済学部卒業、同年エーザイ株式会社入社

2005年  医薬事業部事業推進部長(執行役就任)

2011年 チーフタレントオフィサー(現任)

2014年 総務環境安全担当(現任)

2017年  代表執行役(現任)、中国事業担当(現任)、業界担当(現任)

2018年 データインテグリティ推進担当(現任)

タイトル:『認知症治療の展望』 

*申込締切 2019320日(水)に締め切りました。                                 

尚、同窓会東京支部のkg_tokyo_soumu@yahoo.co.jpへのメール返信では、申込み受付出来ませんので、くれぐれもお間違えの無いようにお願い申し上げます。

*お問合わせ先:東京支部  TEL 03-5224-6226

【次回予告】三日月会4月度例会は424日に仮題『人生百年時代』を生き伸びるための運動器と運動の重要性と言うタイトルで開催する予定でございます。

以上