三日月会5月度例会は、4月と同様に銀座オフィスにお集まりいただき開催いたしました。講師は、産経新聞社で安全保障担当論説委員、防衛大学校においては修士課程非常勤講師などを勤められました関西学院大学経済学部1959年ご卒業(現在87歳)の岡芳輝氏をお迎えして、「憲法改正と自衛官のイノチー日本の防衛力を考える」のタイトルでご講演をいただきました。2004年よりは、ウイーンに留学され2009年ウイーン大学修士課程、2017年博士課程修了、博士号を取得されました。今年2月ロシアがウクライナに侵攻。日本の防衛に関心を集める中、皆様ご参加ありがとうございました。 

【ご講演の概要】

  日本の安全保障と自衛官、どのような関係になっているかについて、諸外国との比較をしながらお考えをお話しいただきました。

   普段耳にする「自衛官」と「自衛隊員」はどう違うのか。「自衛官」はユニフォームを着ている人たち、「自衛隊員」はユニフォームを着ている人と事務職の人たちを含むもの。「自衛隊員」の一番の特徴は、宣誓である。自衛隊法施行規則に宣誓というのがあり、特に重要なのは「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め」の1節である。自衛隊員は、自分ではなく、自分以外の人に尽くすという献身的な職業であることを示している。関学で学んだ聖書に「友」は私以外の人、「愛」は博愛として書かれているが、自衛隊員の宣誓と一脈通じるものがある。

   日本では自衛隊は、軍隊ではないと言われているが、防衛を担っているので、軍隊のようなものである。軍隊は、百戦百勝を目指さなければならない集団のことで、1敗でもすると国が滅びるので負けられない。自衛隊も、百戦百勝でなければならないという重い責務を負っている。 

   世界で一番強い軍隊をもっているのは、アメリカである。アメリカでは、困ったら海兵隊が助けに来ると言われている。これは国家と国民の信頼関係が強いことを示しており、強い軍隊を生みだしている理由である。アメリカでは幼稚園児の頃から「アメリカに忠誠を誓う」と暗唱させられているほど、国家と国民の信頼関係が、教育のなかで自然に育まれている。また飛行機では、軍人に対する尊敬から、制服の軍人が先に乗れる。日本では考えられないことである。軍人と国民が親密であることが安全保障の大事な部分である。個人が国家に尽くすという気持ちは、諸外国では行き渡っており、国民が普通に持っている。 

   日本では、自衛隊はどのような存在なのか。自衛隊の役割は、本来は「防衛」であるが国民の受け取り方は違っている。2018年の自衛隊・防衛に関する世論調査によれば

 ・自衛隊に関心がある        :67.8%、ない:31.4

 ・関心がない理由          :自分の生活に関係がないから39.1

 ・自衛隊にどのような役割を期待するか:1.災害派遣 2.国の安全確保

 ・外国から侵略されたらどうするか  :自衛隊に参加して戦う5.9

   自衛隊に関心がない理由に「自分の生活に関係がない4割あったことが特徴的である。また日本人の多くは、自衛隊に国防ではなく、災害派遣に期待していることも分かる。

 「国民のために戦う意思があるか」という調査の国別回答では、日本は「ある」が10%と諸外国から見て圧倒的少ない。「分からないが47%となっており、日本人は、国防は自衛隊がやってくれるもので、自分には関係ないと思っている人が多いことが分かる。諸外国では、国防は国民の義務と憲法などに明記され、戦争が起これば最大の危機であり、国防は国民に責任があると教えている。日本にはそれが無いので自衛隊に関心が少ない。日本人は、自衛隊が国民の防衛を担い、緊急の災害派遣など国民のために活動を行っているのであるから、自衛隊にもっと敬意を払って良いのではないか。私たちは、自衛隊の価値を高めて相応しい処遇をしていかなければならない。そのためには自衛隊を憲法に明記すべきである。憲法第9条に「陸海空軍そのたの戦力は、これを保持しない」と記されている。日本の自衛隊員は25万人、戦力は世界で6番目である。強大な戦力を持っているにもかかわらず、憲法9条により軍隊は保持していないと政府は述べている。自衛隊は、宣誓をして、主権と国民を守る人々の集団であり、国民は、国家のために生命の危険を冒している人たちに感謝をしなければならない。 

 皆さまは、自衛隊について日頃、お考えになったことがありますでしょうか。

 ウクライナ侵攻により、日本もロシアに隣接しており、今我が国の安全保障について私たちは、考えさせられています。防衛や自衛隊の在り方、憲法改正など様々な議論が存在します。今回の講演をお聞きになられて、我が国の安全保障と憲法に関心を持っていただければ、幸いです。

【以下開催時のご案内抜粋】

  三日月会5月度例会は、一昨年2020年3月25日(水曜日)にご講演を予定しておりました、八十二歳と十一カ月の時にウィーン大学から博士号を取得された岡芳輝氏をお迎えして、下記内容にてご講演を賜る事になりました。『2017年11月27日、卒業試験(Rigorosum)を終わってリンハート教授が「ドクターオカ、おめでとう」と祝福してくださったときは、熱い達成感を全身で味わったのである。』と「正論」令和元年8月号に記されておられます。13年4か月過ごされたウィーン留学期間にご経験された様々な出来事も交えながら、ロシアがウクライナに侵攻している現状に鑑み、日本の防衛力に造詣が深い岡氏から、今なぜ憲法改正が必要か、国民と自衛隊との関係において自衛隊員の命と名誉を諸外国と比較する等の興味深いお話しを拝聴したく存じます。是非とも多数の皆様のご参加を賜わりますようご案内申し上げます。 

 記

日  時:2022年5月7日(土曜日)14時30分~15時45分【14時開場】

場  所:関西学院同窓会本部 銀座オフィス

         東京都中央区銀座三丁目10-9 KEC銀座ビル7階

        アクセス:都営浅草線「東銀座」A8徒歩1分、銀座線・丸の内線・日比谷線「銀座」駅A12徒歩3分

会  費 :1,000 (小ペットボトルの飲み物を用意いたします。)

講  師 :岡 芳輝(おか よしてる)氏

 1959年 関西学院大学経済学部卒業(中学部1回生)と同時に産経新聞社入社。その後、大阪・社会部、和歌山支局、名古屋・中部総局、夕刊フジ報道部、編集委員、2004年6月末まで安全保障担当論説委員(同時期に防衛大学校修士課程非常勤講師兼務)。

2004年10月 ウィーン留学を始める 2009年 ウィーン大学に於いて修士課程修了2017年11月、博士課程修了(Ph. D)。

著書:「平成の自衛隊」(1998年、産経新聞ニュースサービス)、「生物化学兵器」(1978年、教育社)、ほかに論文多数

訳書:「新・戦争のテクノロジー」(ジェームズ・ダニガン著、1992年、河出書房新社)

タイトル :「憲法改正と自衛官のイノチー日本の防衛力を考える」