三日月会2月例会は、2017年9月に「子どもの貧困と教育格差」でご講演頂いたNPO法人チャンス・フォー・チルドレンの今井悠介氏に再度ご登壇頂き、「コロナ禍における子どもの貧困・教育格差解消への取り組み」というテーマでご講演をいただきました。

 今井氏は、関西学院大学在学中に、阪神淡路大震災を契機に関学生によって設立されたNPO法人ブレインヒューマニティに出会い、そのご経験から東日本大震災で困難な状況にある子ども達に支援を行うことを目的に2011年チャンス・フォー・チルドレンを立ち上げられました。11年間全ての子どもにチャンスがある社会の実現に向けて活動されています。

 昨年から様々な物の値上がりで生活が厳しくなり、子どもの貧困問題に関心が向けられているなか、25名のご参加をいただきました。ありがとうございました。 

【ご講演の概要】 

 今が子ども達の環境は、一番厳しい状況にあります。コロナ禍で家庭収入に大きなダメージが来ていることに加え、物価高騰が子ども達の生活に大きな影響を与えています。 

経済的に困難な家庭の収入はどれくらいかというと、日本の相対的貧困のラインの月収(親子2人で暮らす家庭・シングルマザーと子供)が、14.3万円です。2人所帯月収の平均が29万円なので、収入は半分以下ということです。経済的に困難な家庭は、教育や学びに関する費用を削ったり、病院に行くのを我慢したりして生活を維持しています。これが現代における貧困の状態で、子ども達は、様々なチャンスや人とつながる機会を失っています。

昨年全国の小学生を持つ約2000人の保護者へアンケートを行ったところ、年収300万未満の家庭では、3人に1人は、旅行や習い事など学校以外の活動や体験を、1年間で1回も行っていないことが分かりました。

学校外での体験は、①子ども達の自信や意欲を育み、②塾や習い事を通して学び方そのものを学ぶことで勉強に良い影響を生じさせ、③人と繋がる機会を得ることが出来ます。

経済的理由で学校外での体験が出来ないのは、人間関係や学力において問題なのです。 

親の経済的貧困が子どもの学力や体験の格差になり、進路選択の格差になって、将来の職業の選択の機会の格差になっていきます。貧困状態が世帯を超えて連鎖してしまうのです。

厳しい状況下でのチャンス・フォー・チルドレン(CFC)の11年間の活動を紹介します。

1.スタディクーポンの提供

  学びや体験の格差解消のために皆様から頂いた寄付金を原資に、経済的な困難を抱える子供たちに対して、学校外の学びの場で利用でき  るスタディクーポンを提供しています。

  年間1.5億円のスタディクーポンを発行し、子ども達はクーポンを使って、提携した地域の塾や習い事に行き、CFCから家庭に代わって料金をお支払いするシステムです。

  スタディクーポン方式支援の特徴及び利点

  ●  クーポンの使い道を子どもの学びや体験などの教育の活動に限定するので、確実に子どもの学ぶ機会を増やすことが出来る。

  ● 子供たちが学習・文化的活動・スポーツなどやりたい事が選択できる。

  ●  「スティグマ(負のレッテル)」を軽減しながら、支援が届けられる。

  子どもの貧困の取り組みを進めていく上で重要な事は、学校のクラスにおいて貧困状態が誰にも分からない状態になっていることなの  で、スタディクーポンでは、誰がクーポンを利用しているか、分かりません。スティグマが無い状態で支援が届けられます。

2.大学生ボランティアが、クーポンを提供された子ども達と定期的に面談を行っている。

  大学生のボランティアが、学習や生活の相談に応じて子ども達をサポートしています。

3.スタディクーポンの取り組みが、日本の社会政策に対して影響を与えてきている。

 17の自治体が学校外教育に関する費用を公的に補助しようとする取り組みが始まっています。CFCは、大阪市などの7市区町とこの取り組みを共同して運営をしています。  

 そして寄付を通じて年間約600人の子ども達を支えていますが、公的な支援を加えると年間2万人の子ども達に支援を届けています。この他にも地方の自治体が子どもの貧困対策とか教育の支援対策にCFCの取り組みを取り入れていこうという動きが始まってきています。 

 2022年のクーポンの利用者の応募状況は、最多の1902人の応募があり、クーポン提供額も最大で提供できたのですが、1500人以上が落選してしまったという状況があります。

 全ての子ども達が多様な学びの機会を通じて、様々な人に出会い、成長出来るような社会を目指して、スタディクーポン事業を運営していきたいと思っています。1人でも多くに支援を届けていきたいと思っていますので、皆様にご支援をお願いしたいと思いますと締めくくられました。参加者の皆様は、ご講演後、寄付金箱に寄付を入れてくださいました。

 困難を抱える子ども達とその家族をサポートしたいとの強い熱意と、CFCの活動を個人から公に広げていかれていることに、大変感動いたしました。ありがとうございました。

 皆さま、チャンス・フォー・チルドレンへのご支援、よろしくお願いいたします。

(ホームページ CFCで検索)

 【以下開催時のご案内抜粋】

 三日月会2月度例会は、2017年9月にタイトル「子どもの貧困と教育格差(学校外教育バウチャーによる支援)」でご講演頂いたCFCの今井悠介氏に再度ご登壇頂き、コロナ禍における子どもの貧困・教育格差解消への取り組みに関して昨年8月にご講演を予定していましたが、新型コロナウィルス感染拡大の影響で延期になり、今回改めて下記要領にて、開催する運びとなりました。

 同法人では、経済的困難を抱える子どもに塾や習い事、体験活動等で利用できるスタディクーポンの提供を通じて、子どもたちの学ぶ機会を保障し、すべての子どもたちにチャンスがある社会づくりを目指して幅広い活動を続けておられます。

 東京支部としても、SDGs宣言 「“Mastery for Service”を体現し、SDGsに貢献する”」によって、同団体を支援していこうと言う方向性が発表されています。

 是非とも多数の皆様のご参加を賜わりますようご案内申し上げます。

                                記

日  時:2023年2月4日(土曜日)14時30分~15時45分【14時開場】

場  所:関西学院同窓会本部 銀座オフィス

東京都中央区銀座三丁目10-9 KEC銀座ビル7階

アクセス:都営浅草線「東銀座」A8徒歩1分、銀座線・丸の内線・日比谷線「銀座」駅A12徒歩3分

会  費 :1,000円 (小ペットボトルの飲み物を用意いたします。)

講  師 : 今井 悠介氏(公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン(CFC)代表理事)

 1986年 兵庫県出身。関西学院大学在学中に「NPO法人ブレーンヒューマニティー」において不登校関連事業部代表を歴任し、不登校児童等の支援や子どもの体験活動に携わる。2009年社会学部卒業後、株式会社日本公文教育研究会(KUMON)に入社し、子どもの学習支援に従事。東日本大震災を契機に、チャンス・フォー・チルドレンを設立し、代表理事に就任。2014年に内閣総理大臣の認定を受け、公益社団法人となる。

全国子どもの貧困・教育支援団体協議会理事、内閣官房行政改革推進会議「秋のレビュー」参考人、内閣官房行革推進会議「子供の貧困・シングルペアレンツチーム」専門委員を務める。

共著に「東日本大震災被災地・子ども教育白書2015」がある。

タイトル :コロナ禍における子どもの貧困・教育格差解消への取り組み

                                                     以上