【2015年12月度例会 講演概要】 

12月の三日月会は映画監督、脚本家、プロデューサーである佐々木浩久氏をお迎えして「映画について私が知っている2〜3の事柄」と題して映画に関するお話を伺いました。45名の皆さまのご参加ありがとうございました。

 映画はエジソンにより発明されました。最初はカーニバルなどで見せる「キネトスコープ」というのぞきメガネのような娯楽性の高いものでした。アメリカ映画はもともとこのように娯楽としてスタートしたのです。

 一方ヨーロッパではリュミエール兄弟がフィルムを使った「シネマトグラフ」を博覧会で公開しました。最初のフィルムは「工場の出口」というタイトルで、単なるドキュュメンタリーではなく構成されたものです。この傾向はドイツで表現主義として発展し、ヨーロッパでは映画は芸術性の高いものとして認識されています。

 アメリカでは娯楽性を求めるあまり、残酷で過激な描写が増えたために「ヘイズ法」という法律が施行されました。この法律により、殺人や性描写などの直接的な表現が規制されました。しかしこの規制のおかげで、アメリカ映画の質と内容があがったのです。殺人などの直接表現を避けるためヒッチコックは怯えた顔や影などを使って「殺人」を表現しました。このような工夫が物語性や演出の技術を高めたのです。

 映画もまた時代の波に翻弄されます。ヒトラー時代迫害を受けた優秀な監督がアメリカ逃げて来て、1950年代に入ると、ハリウッド映画は黄金期を迎えます。

 戦後の冷戦時代の赤狩りにより、共産主義のレッテルを貼られたチャプリンはイギリスに追放されました。

 1970年以降、石油メジャー、ユダヤ資本によりお金をかけた映画が増える一方、ジョージ・ルーカスなどのお金がない若手監督でも自由に映画を作り、ヒットを出すようになりました。

 映画は娯楽か芸術かという議論がありますが、フランスで50年代にフランソワ・トリュフォーが「ヌーベルバーグ」を先導し、せりふや目線などによって、想像力を掻き立てさせるような演出を試みました。ヨーロッパ映画が芸術的あるいは学問的に発展したのはこういった潮流のためかもしれません。

 映画は、脚本通りでは、単に「成立」しているだけです。どのようにして観客の気持ちを動かすか、情動に訴えるか。俳優に演技をつけて観客の感動を引き出す、ここに監督の力があり、映画の出来の違いがでてくるのです。

 映画はこれからどうなるのでしょうか。

 すでにフィルムがなくなり、ほとんどデジタル化されています。それによって経費をかけずに作ることができるようになりました。経験がなくても作ることができるようになった結果、質の低下が心配されます。内容より、CD映像や派手な音楽でごまかすことができるようになるからです。

 このような風潮のなかで今までのような扱い難くても味のある俳優は育たなくなるでしょう。いまの撮影現場では彼らは敬遠されるからです。

 デジタルで今後期待される分野があります。グレーディングというデジタル素材に色をつけたり、色彩を調整する技術です。これによって今後映画の表現力が高まるかもしれません。

 佐々木監督はあくまでも商業映画に徹する心意気です。多くの人に見てもらい、世界に発信したい。その姿勢で映画作りをしていらっしゃいます。今、谷崎潤一郎の作品の映画化の企画をお持ちだそうです。どんな作品ができるのでしょうか。公開が楽しみです。

【以下今回のご案内文】

三日月会2015年12月度例会のご案内

年末年始は多くの方が古今東西の映画やテレビドラマで楽しまれることと存じます。12月例会は映画監督の佐々木浩久氏をお招きして、映画の歴史や映像作品の製作現場のなどについてお話しを頂きます。商業映画はいかに始まったのか。映画はヨーロッパでは芸術として発展し、アメリカでは娯楽として発展してきました。その歴史と現在の映画のリアルな状況とこれからの映画の有り様について、また映画とテレビドラマの作り方には大きな違いがあります。映画の「歴史・現在と未来」、映像作品の作り方や製作現場の様子を知れば、その楽しさは増すのではないでしょうか。

日  時 :2015年12月18日(金)12151330

場  所 :関西学院大学東京丸の内キャンパス ランバスホール

千代田区丸の内1-7-12 サピアタワー10階

  3階サピアタワーオフィスロビー受付前に「三日月会受付」(11:3012:10)を設置。

会  費:1,500円(軽食は11:45から講演前にお出しいたします。)

講  師:佐々木浩久(ささき ひろひさ)氏  映画監督・脚本家

1961年北海道生まれ。1985年「ドレミファ娘の血は騒ぐ」(黒沢清監督)の助監督を務める。以降、1993年まで黒沢清、長崎俊一の全作品に助監督として参加。1994年松浦理恵子の純文学作品の映画化「ナチュラルウーマン」で長編劇映画の監督としてデビュー。1995年度シナリオ作家協会ベストテン選出。オリジナルビデオ映画の監督を十数本演出の後、2000年、脚本家の高橋洋と暖めていた待望の企画「発狂する唇」を監督。カルト・ムービーとして絶大な人気を呼び、テアトル新宿のレイトショー動員記録を更新。続く、2002年第2弾「血を吸う宇宙」で再び同館週間記録を塗り替える。2004年から参加しているBs―TBSの連続テレビドラマ「ケータイ刑事シリーズ」では最多演出記録。2012年から日本映画大学講師も務める。

タイトル『映画について私が知っている2~3の事柄』

*申込締切は、12月11日(金)(締切厳守)です。

人数に制限がございますのでお早めにお申込み下さい。

なお、出席される方のみお返事を頂きますようお願いします。

*お申し込み方法:お申し込みは締切りました。

*お問合わせ先:東京支部  TEL 03-5224-6226  FAX 03-5224-6227     E-mail:kg.tokyo@nifty.com

【次回予告】 新年1月度三日月会は1月20日(水)

講師:林 良博 氏 (国立科学博物館長/山階鳥類研究所長)

タイトル『今どきの人と動物の関係』 を予定しています

 以上