9月例会は「子どもの貧困と教育格差(学校外教育バウチャーによる支援)」というテーマで、公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事の今井悠介氏(平成21年卒)にご講演いただきました。37名の皆さまにご来場いただきました。ありがとうございました。 

 今井氏は小学2年生のときに阪神・淡路大震災を体験されました。学生時代に、この震災で被災した子どもの支援を原点に活動するNPO法人ブレーンヒューマニティーの活動に携わったことがいまにつながっています。2011年の東日本大震災を機に、一般社団法人チャンス・フォー・チルドレンを立ち上げ、2014年に公益社団法人となりました。仕事として関わるまでにいろいろな出会いがありました。ブレーンヒューマニティーで不登校の子どものケアにボランティアとして関わったこと、大学4年生のときに一ヶ月間、引きこもりの若者対象のキャンプにスタッフとして参加し、長期間の社会的孤立から笑うことさえ忘れてしまった青年に出会い、ショックを受けたことなどです。 

 13.9パーセントという数字、これは日本の子どもの貧困率です。つまり7人に1人の子どもは、貧困状態にあります。貧困には2種類あり、絶対的貧困は生きるために必要な衣食住が満たされない状態で、相対的貧困はその社会で当たり前の生活を送ることができない状態をいいます。子どもの貧困率は世帯所得が中央値の半分に満たない家庭の子どもの割合で、相対的貧困を指します。相対的貧困は眼に見えないので認知されにくいのです。世帯年収と子どもの学力には明らかな相関関係があります。親の経済的貧困は、子どもの学校外教育の機会を奪い、学力や生きる力の低下を招きます。それが将来、若者の経済的貧困を招き、ひいては親世代の経済的貧困となってしまいます。 

 教育格差の解消を図れば、この貧困の連鎖を断ち切ることができます。実は教育格差は放課後の活動で生まれています。学校教育の機会が平等な日本では、家庭が自己負担する教育費の6070パーセントは、学校外教育費です。また、「皆にあるものが自分だけない」という相対的貧困は、子どもの意欲の低下を招きます。例えば、子どもたちは放課後それぞれの活動の合間を縫って遊ぶ時間を捻出しますが、自分だけ予定が白紙の子どもはそこで疎外感を覚えます。何度もそのような経験を繰り返した子どもは、その辛さから逃げるため、意欲や希望を捨ててしまうのです。 

 教育支援としての現金給付は、教育以外の生活費に使われてしまうことがあります。その点バウチャー(クーポン)での支援は、教育目的以外には使えません。また、無料の学習支援は、子どもがサービスを選択できないことや、「貧困家庭の子ども」というレッテルが貼られてしまうという課題があります。バウチャーを使えば、自由に希望する塾や習いごとに通えます。また、チャンス・フォー・チルドレンでは、バウチャーを提供するだけでなく、ボランティアの大学生が子どもたちの学習相談にのり、サポートを行っています。バウチャーを使い、学習塾等で学び、志望する高校や大学に進学した子どもたちが多くいます。精神的に支えられたという子どももいます。 

 現在1.5億円の活動費で456人の子どもが支援を受けています。ある子どもは、塾に通えるようになり成績があがり、一層学習意欲が湧き、その意欲的な姿を見た親も「頑張ろう」と思うようになったそうです。また、この子どもは家族以外に手を差し伸べてくれる人がいることに気づいたそうです。5年間の活動で支援への応募者は6000人いましたが、原資となる寄付には限りがあり、全ての子どもたちの要望に答えられない状態です。クーポン提供者は、収入、学年(緊急性の高い受験生、投資対効果の高い小学生を優先)、学習意欲の3つを審査基準として決定しています。

 支援が必要な子どもの把握は難しく、学校や生活保護のケアワーカーやこども食堂などと連携してチラシを配り、支援の情報を届けています。今後は自治体との連携を考えています。支援から落選してしまった子どもについては、地域の他の支援に繋げるようフォローしていきたいそうです。

 チャンス・フォー・チルドレンへの寄付は、この国の未来への投資。日本の将来のために協力したいですね。

【今回のご案内状】

三日月会9月度例会は、今年のフェスタで「KG東京アウォード」奨励賞を受賞されました公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンの今井悠介(いまい ゆうすけ)氏に下記内容にてご講演を頂く事になりました。  チャンス・フォー・チルドレンは当初、阪神・淡路大震災を原点に、被災した子供たちの教育支援を行ってきたNPO法人ブレーンヒューマニティーのプロジェクトとして2009年に発足しました。その後2011年の東日本大震災を契機に一般社団法人チャンス・フォー・チルドレンとして独立し、2014年に内閣総理大臣の認定を受け公益社団法人となりました。同法人では経済的困難を抱える子供に塾や習い事、体験活動等で利用できる学校外教育バウチャー(クーポン)を提供しており、バウチャーは教育以外の目的に使用されることなく、確実に教育機会を届けられるという特長があります。このような活動を通して、すべての子供たちにチャンスがある社会づくりを目指して幅広い活動を続けておられます。是非とも多数の皆様のご出席を賜りますようご案内申し上げます。

           記
日  時 :2017920日(水曜日)12151330

場  所 :関西学院大学東京丸の内キャンパス ランバスホール

              千代田区丸の内1-7-12 サピアタワー10階

      サピアタワーオフィス3階受付前に「三日月会受付」(11:3012:10)を設置。

会  費 :1,500円 (軽食は11:30から講演前にお出しいたします。)

講  師  : 今井 悠介氏 公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事

1986年 兵庫県出身。関西学院大学在学中に「NPO法人ブレーンヒューマニティー」において不登校関連事業部代表を歴任し、不登校児童等の支援に携わる。卒業後、株式会社日本公文教育研究会(KUMON)に入社し、直営の学習教室の指導者業務や地域のフランチャイズ教室のコンサルティング業務に従事。東日本大震災後、チャンス・フォー・チルドレンを設立し、代表理事に就任。2014年に内閣総理大臣の認定を受け、公益社団法人となる。全国子どもの貧困・教育支援団体協議会幹事等を務める。共著に「東日本大震災被災地・子ども教育白書2015」がある。

タイトル:子どもの貧困と教育格差(学校外教育バウチャーによる支援)

*申込締切日: 2017914日(木)(お申込みは、締切りました。

尚、同窓会東京支部のkg_tokyo_soumu@yahoo.co.jpへのメール返信では、申込み受付出来ませんので、くれぐれもお間違えの無い用お願い申し上げます。

*お問合わせ先:東京支部  TEL 03-5224-6226  FAX 03-5224-6227

【次回予告】10月度例会は、昨年に引き続き1018日に関西学院大学 学院史編纂室 総合主幹池田裕子氏にご講演頂く予定です。

以上