7月の例会は横浜美術館で開催中の「モネ それからの100年」を12人で鑑賞しました。

印象派を代表する画家クロード・モネが、画業の集大成とたる《睡蓮》大装飾画の制作に着手してから約100年。ひたすらに風景を見つめ、描き続けたモネの作品は、今日にいたるまで私たちを魅了してやみません。
モネの絵画の特質・独創性は、現代の作家たちにも、さまざまなかたちで引き継がれています。

鑑賞後、みなとみらいのランドマークホテル68F「皇苑」で、暑気払いを実施。暑さに負けずに9月例会での再会を誓い合いました。

以下は主催者HPからの引用です。(作品はコピー出来ていない可能性があります)

1 新しい絵画へ 立ちあがる色彩と筆触

1850年代後半から戸外での絵画制作をスタートし、1870年代には印象派グループの中核として活動したモネ。その画業前半の作品群には、晩年の創作へとつながる資質が随所に垣間見えます。
本章では、1870年代の印象派期をまたぐキャリア前半の作品群を手がかりに、現代へと通じるモネの芸術の先駆性を再確認します。対象の細部描写から離れた色彩の自律的な用い方、絵具の物質性や「描く」行為そのものの提示といった傾向は、具象/抽象を問わず現代の画家たちが関心をよせる諸課題へと結びついています。

 
 
クロード・モネ《ヴィレの風景》
1883年 油彩、キャンヴァス 個人蔵 ©Christie’s Images / Bridgeman Images

後半生の舞台となるジヴェルニーにモネが居を定めた年に、その近郊の町で描いた作品。空・山・水を一体化する描写、即興的な筆致、各所の塗り残しなどに、抽象画に通じる特質が認められます。

丸山直文《puddle in the woods 5》
2010年 アクリル、綿布 作家蔵 ©Naofumi Maruyama, Courtesy of ShugoArts

初期の抽象画制作を経て、1990年代後半から風景をメインモティーフに制作を続ける丸山。淡さと鮮やかさを併せもった色斑(しきはん)のハーモニーによって、木々に囲まれた水辺の情景を、虚実のはざまのような幻想的空間へと昇華させています。

クロード・モネ《モンソー公園》
1876年 油彩、キャンヴァス 泉屋博古館分館 
※展示期間:7月14日(土)-8月17日(金)

パリ市内の公園が、印象派の「筆触分割」の手法を駆使して描き出されています。右半分いっぱいにマロニエの木を配する大胆な構図、赤と緑のコントラスト、奔放な筆づかいとが相まって、華やかさと活気に満ちた画面がつくられています。

中西夏之《G/Z 夏至・橋の上 To May VII》
1992年 油彩、キャンヴァス 名古屋画廊

絵のまわり、画家のまわりの空間は、無数の光の粒々で充満していると語ったように、中西の制作は「光」の感覚に貫かれていました。画面に散らばる白い点は、そんな光の粒々を、黄緑の面は、強い陽射しが川面につくる光の帯を想像させます。

 

2 形なきものへの眼差し 光、大気、水

変幻する光や大気の一瞬をキャンヴァス上に写しとどめることは、モネの終生のテーマでした。その関心は、1900年前後のロンドン滞在期に最初の頂点を迎えます。グラデーション、にじみ、色の薄い塗り重ねによって、画面は輝きをもった色面の広がりへと向かっていきました。
本章では、1880年代から「ロンドン」の連作にかけてのモネの絵画を起点として、風景の抽象化、移ろいや瞬間性の表現、絵画固有の空間表現の探究といった問題意識を共有する現代アートを紹介します。

 
 
クロード・モネ《セーヌ河の日没、冬》
1880年 油彩、キャンヴァス ポーラ美術館

1878年にパリから転居したヴェトゥイユの地で、モネは氷結したセーヌ河の光景に想像力を刺激され、大気、光線、水面の表情が刻々と変化するさまを異なる時間帯で描き分けました。のちの「連作」の先駆けとなった作品のひとつです。

モーリス・ルイス《ワイン》
1958年 アクリル、キャンヴァス 広島市現代美術館

ルイスの絵画を代表する「ヴェール」シリーズの一作で、絵具を垂れ流して画布に染み込ませるステイニング(滲み)という技法が用いられています。モネの絵画と同様、繊細に重ねあわされた色彩の豊かなハーモニーが、観るものの感覚に直接訴えかけてきます。

クロード・モネ《霧の中の太陽》
1904年 油彩、キャンヴァス 個人蔵

モネは1899年から数年にわたり、ロンドン名物である霧に包まれたテムズ河畔の光景を繰り返し描きました。淡い色彩の重なりが生み出すヴェールに覆われたような空間表現に、印象派の筆触分割を乗り越えた画家の新境地が示されています。

ゲルハルト・リヒター《アブストラクト・ペインティング(CR845-8)》
1997年 油彩、アルディボンド板 金沢21世紀美術館 撮影:木奥惠三 ©Gerhard Richter 2018(0005)

ドイツ現代絵画の第一人者リヒターが1970年代後半から継続するシリーズの一作。スキージ(へら)を用いて平滑に仕上げられた色の層によって、捉えがたい奥行きと、内部に充満する光とを観るものに感じさせます。

水野勝規《reflection》
2012年 シングルチャンネル・ビデオ(HD、サイレント 9分) 作家蔵

風景の定点撮影にもとづくスケッチ映像集的な作風で知られる水野は今回、新作を含む3点を出品。《reflection》では、水面に反映した木々が巨大スクリーンいっぱいに映し出され、その形態がゆっくりと変化していきます。

 

3 モネへのオマージュ さまざまな「引用」のかたち

モネの絵画のモティーフは、後世の多くの作品に引用されてきました。それらの作品には、アーティストそれぞれの関心にもとづく創意が込められています。
本章では、モネの絵画から直接インスピレーションを得た現代の作品群を紹介し、その個々の創作のなかにモネへの共鳴、モネからの継承を見出します。

 
 
ロイ・リキテンスタイン《日本の橋のある睡蓮》
1992年 エナメルによるスクリーンプリント、ステンレス、彩色した額 国立国際美術館 
©Estate of Roy Lichtenstein, N.Y. & JASPAR, Tokyo, 2018 E2965

「積みわら」をはじめ、モネの絵画をしばしば自作に引用したリキテンスタイン。モティーフのリズミカルな反復、金属板を用いた光の反射など、ポップ・アートならではの手法で、モネにオマージュをささげています。

ルイ・カーヌ《睡蓮》
1993年 油彩、キャンヴァス ギャラリーヤマキファインアート ©ADAGP, Paris & JASPER, Tokyo, 2018 E2935

フランスの現代画家カーヌは、モネの「睡蓮」に触発された作品も数多く手がけています。同じ構図の中にわずかな筆触の違いをみせる9つの画面によって、反復と変奏というモネの絵画の主題が再提示されています。

福田美蘭《モネの睡蓮》
2002年 アクリル、パネルに貼ったキャンヴァス、額縁(既製品) 大原美術館

大原美術館(倉敷)の中庭の池に浮かぶ睡蓮は、ジヴェルニーから株分けされたもの。福田は、その睡蓮と水面の反射とが重なる光景を描き出しました。その「イメージの重層」という主題は、本展で発表される新作にも引き継がれます。

堂本尚郎《連鎖反応-クロード・モネに捧げる》
2003年 油彩、キャンヴァス 個人蔵

1970年代後半から、流動する水面を主なモティーフとする「連鎖反応」シリーズを展開した堂本。そのなかで唯一「モネ」を題名に冠したのが、本作です。網目状のモティーフが水平方向に流れるように連続し、ダイナミックな画面を形づくっています。

 

4 フレームを越えて 拡張するイメージと空間

極端なクローズアップによって画面いっぱいに水面を捉えた「睡蓮」の連作。風景の断片を切り取ったような構図と、その中でリズミカルに反復するモティーフによって、イメージが画面の外まで広がっていくような感覚を生み出しています。
本章では、「睡蓮」の連作を中心としたモネ後期の作品をもとに、反復の表現、異なるイメージの重ね合わせ、周囲の空間への広がりといった「拡張性」をキーワードに、現代アートとの密接な関係を浮き彫りにします。

 
 
クロード・モネ《睡蓮、水草の反映》
1914-17年 油彩、キャンヴァス ナーマッド・コレクション(モナコ)

水面に浮かぶ睡蓮と、水辺に生い茂る草が、画面の両端から割り込んでくるように配置されています。その大胆な構図と、やや横に長くとられた画面のフォーマットは、この時期に画家が着手したオランジュリー美術館の大装飾画との関連をうかがわせます。