三日月会12月例会はネパールで18年間、敎育と医療支援に携わってこられた吉岡大祐氏にネパールの現状や子供達の教育環境について、『ヒマラヤに学校をつくる』と題してご講演いただきました。ヒマラヤ小学校を創設され現在は運営責任者として活動中です。12月も半ばをすぎてからの例会でしたが32名の皆様にご参加いただきました。ありがとうございました。

【ご講演の概要】[

 ネパールといえば美しいヒマラヤの峰々が脳裏にうかびますが、その南側にあるネパールは世界の最貧国のひとつです。

 吉岡さんは体験を重んじた家庭教育や高校時代の恩師の社会の役に立つ人間になれという教えを胸に、鍼灸師の道をめざします。学校時代の柔道部の仲間が怪我をしたときに同行し、その治療に感銘を受けての選択でした。国家資格を得て憧れの国アメリカへと夢をふくらませますが、知人のネパール人からネパールには困っている人がたくさんいるという話をきき、行先をネパールに変更します

 大学に入りネパール語を学ぶかたわらボランティアで治療を始めます。社会の下層の人々は、病院はおろか薬さえ買うことができません。そもそも温かい眼差しさえ向けられでいないのです。あるとき知り合いの眼科医に医療キャンプにさそわれ5日がかりで田舎の村に治療にいきます。そこで目にしたのは劣悪な環境の中で、感染症で苦しむ大勢の子供たちの姿でした。母親に知識がないため手を洗う、水は沸かして飲むという基本的なことさえ知らないためです。

 都会でも親は怪我などで働けない家庭の子供は幼いうちからレンガ工場で働き、親のない子はゴミ捨て場でプラスチックなどをあさりそこで寝るというストリートチルドレンになっていました。男の子は祖霊をまつる役目があるが、第一子に女の子が生まれると呪われているということで婚家を追い出され母子で貧しい暮らしを余儀なくされるという現実もあります。持参金制度も女の子をきらう原因の一つです。物乞いの子供は同情を引くために手足を切られる例もあります。

 田舎の村で自分の名前の書き方を教えてほしいと頼まれ、字を覚えたら盲目のお母さんの目がみえるかとたずねた子供に出会ったことがきっかけで、なんとかこの子たちのために学校を作りたいという気持ちに突き動かされます。知り合った冒険家の三浦雄一郎さんの協力を得て、三浦さんが校長をつとめるクラーク記念国際学校が協力してくれることになりました。3年をかけて資金を集め、やっと設立にこきつけました。吉岡さんも校舎建設に汗をながし高校生たちも現地まで来て建設作業に携わってくれました。

 2004年に開校し、平屋建でスタートした校舎もいまでは3階建てになりました。学校にくると自由な時間が持てるようになり夢さえ持てなかったこどもたちが夢を持つようになりました。卒業生はもう200人をこえました。いまは4歳から18歳までの子供が100人ほど学んでいます。日本の学校にはないプログラムがあります。まず自分自身の命は自分で守るというところから保健衛生プロブラム。毎日シラミのついた頭を洗ってやり洗濯の方法を教えます。給食はありませんが月に一度は栄養改善プログラムということでお腹がいっぱいになるまでお代わり自由で食事を出します。職業訓練コースもつくり手に職をつけて自立できるような体制もとっています。お金を貯めるという概念がなかったために子供達が学校に通えないという事情もあるので親の生活指導もしています。

 4年前吉岡さんは体調をくずして帰国し、学校は現地の人たちの自主運営にまかせ今は、日本からの後方支援で主に全国の学校を中心に講演活動をなさっています。学校で話すときは子供たちに世界にはいろいろな子供がいるということを話されるそうです。

 吉岡さんの熱意に感動して講演が終わりました。関学山岳部出身でヒマラヤ登頂も何度もされた同窓生も見えて登山者とネパールの関わりの話も伺うことができました。

 北海道の2倍の面積に100以上の民族が住み、永遠思考で時間の限りという観念がなく、輪廻転成を信じ、悠久のときを生きている人々。神様は八百万どころではあく3億3000柱もおられるそうです。お釈迦さまの生地は、ネパールにあるルンビニですが今は仏教徒は2割ほどで8割はヒンズー教を信じています。

 子供達の置かれている過酷な状況に胸を突かれました。なにかできることはないのかを考えさせられた講演でした。

【以下ご案内文】

12月度例会は、「クラーク記念ヒマラヤ小学校」の運営責任者吉岡大祐氏に
ゼロから学校づくりに挑んだその15年間の活動について下記要領にてご講演を賜ります。
  雄大なヒマラヤに抱かれ、三億三千の神々と種々雑多な人々が同居する南アジアの小さな国・ネパールは、世界最貧国のひとつに数えられ、現在もさまざまな社会問題を抱えています。そんなネパールに2004年、プロスキーヤーで冒険家の三浦雄一郎氏をはじめ
日本の高校生有志の協力の下、3年間の募金活動を経て、現地の小さな村に誰もが無償で学べるヒマラヤ小学校が開校しました。今尚、根強く残るカーストや貧困問題に直面しながらも明日を信じて明るく生きる子どもたちの逞しく成長する姿や、国際協力の実情や在り方についてうかがいます。笑顔をとりもどした子供達の元気な様子もご覧頂きたく、是非とも多数の皆様のご出席を賜わりますようご案内申し上げます。
尚、今月もサピアタワーのステーションコンファレンス6階が会場でございます。
サピアタワー1階よりエレベータ、エスカレータで直接会場にお越しください。入館証は不要です。
                                     記
日  時 :2018年12月18日(火曜日)13:30~14:45【13:00開場】
場  所 :ステーションコンファレンス6階(605A会議室)
      千代田区丸の内1-7-12 サピアタワー6階
      サピアタワー6階605A会議室前に「三日月会受付」(13:00~13:25)を   設置
会  費 :1,000円 (小ペットボトルのお茶を用意しますが、軽食の提供はございません)

講  師 :吉岡 大祐(よしおか だいすけ)氏
1976年3月生まれ。1998年、鍼灸師国家試験合格後、22歳の時にネパールへ渡る。
ネパール国立トリヴバン大学で学ぶ傍ら、余暇を利用して近所の老人達へ無料鍼灸治療を始める。
へき地の村で開催された医療キャンプに参加した際、衛生知識がないために多くの子ども達が感染症で亡くなる現状を目の当たりにした事から、友人、知人らと共に「ヒマラヤ青少年育英会」を立ち上げ、僅かな基金を元に貧しい子ども達の就学支援活動を始める。
2004年「クラーク記念ヒマラヤ小学校」を開校。運営責任者として学校運営を行う他、
子ども達と学校の自立を目指し、職業訓練に力を注いでいる。
受賞歴 2003年:21世紀若者賞(社会貢献支援財団)
       2006年:善行表彰・国際貢献表彰((社)日本善行会)
       2009年:テレビ愛媛賞((株)テレビ愛媛)
       2009年:人間力大賞・準グランプリ 外務大臣奨励賞、参議院議長奨励賞受賞((社)日本青年会議所)。

タイトル:『ヒマラヤに学校をつくる』

*申込締切 2018年12月13日(木)に締切りました。
尚、同窓会東京支部のkg_tokyo_soumu@yahoo.co.jp
へのメール返信では、申込み受付出来ませんので、くれぐれもお間違えの無いようにお願い申し上げます。
*お問合わせ先:東京支部  TEL 03-5224-6226
【次回予告】2019年三日月会1月度例会は、1月16日(水)を予定しております。
                                  以上