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<ペーパーバックス・ファン >

サークル「会報」は2001年から書いています。でも作家や小説の好みは人それぞれ違いますから「会報」も相手ごとに気に入って頂けそうなのをと勝手に選んで送っていました。女性には「日の名残り」や「ケン・フォレット」、競馬ファンはもちろん「ディック・フランシス」、クリスチャンとかだと「ペーパーバックと聖書」「ミゼレーレ」といったあんばいに・・で、結局だれに何を送ったんだか、分からなくなってしまいました。
世話役:安部隆雄(昭和34経卒)


歴史のこと 

マイケル・クライトンの "TIMELINE" は、現在の文明・文化・制度すべてのルーツが中世ヨーロッパにあるという歴史観を展開した小説で、冒頭には次ぎの記述があります。

『ローマ人は欧州全土に道路を作り交易を活発化、法秩序を維持しヨーロッパは繁栄した。しかし西暦400年頃を境に帝国は衰退する。ローマ軍は撤収を重ね帝国が崩壊するとその後500年間ヨーロッパは無秩序状態に陥り、人口は減少、交易は低下し都市は衰退した。暗黒の中世 (Low Middle Ages)の時代である。西暦1000年頃ようやく転機がおとずれた。各地の豪族が権力を持ち支配力を強める封建制度(feudalism)の始まりである。農業生産は上昇に転じ、交易も増え都市が復活した。13世紀までにヨーロッパはローマ帝国時以上の繁栄を迎える緒についた。文化の華ひらく黄金の中世 (High Middle Ages) である。そして現代の制度システムの根源はすべてこの中世にある。法制度、国家体制をはじめ技術、文化、さらに市場経済の原理さえこの中世に起源がある。』 

If they didn't know that, then they didn't know the basic facts of who they were. Why they did what they did. Where they had come from. If you didn't know history, you didn't know anything. You were a leaf that didn't know it was part of a tree. (Michael Crichton "TIMELINE" 1999)

一方、海洋冒険・探検ものを得意とするクライブ・カスラーも似たような歴史観を吐露しています。

Searching into the origins of our ancestors can be pretty exotic in its own right. If we feel no attraction for the past, why do millions of us pay homage to ancient Egypt, Rome, and Athens every year? Why do we wander over the battle-fields of Gettisburg and Waterloo or stand on the cliffs and look down on the beaches of Normandy? Because we have to look back into history to see ourselves.
(Clive Cussler, "INCA GOLD" 1994)

ロバート・ラドラム Covert-One シリーズの共著者Gayle Lynds は THE PARIS OPTION (2002)で次のせりふを書いています。

"History is more than the story of a nation, a people. Real history chronicles a country's soul, so that to not know the history is to not know the nation or the people. If we do not know the past, Colonel, we are to not doomed to re-
peat it, non?" 
(塩野七生さんの言葉、「歴史は人間です」と同じ思想ですね。)

ロビン・クック"ABDUCTION" (2000)ではアトランティス大陸とともに消えた高度な文明を持った「第一世代」の人類を登場させています。 クライブ・カスラー "ATLANTIS FOUND" (1999)とも共通した考えで、謎の大陸とともに消えた高度な文明を持った人類は優性種の第一世代で、当時は未開地に住む野蛮人だった劣性種が現代人というものです。そして、ロビン・クックはその第一世代人類が海底でさらに進化した姿を描いていますが、さすがにそこまでゆくと歴史を通り過ぎて完全にSFの世界になってしまいます。

テレビ番組で南米の古代遺跡絵画の中に恐竜に乗った人間がいたり、5億年前の化石の中に三葉虫を踏んだ人間の足跡や、薬指がありました。現代人ホモ・サピエンスはわずか20万年前に出現したもので、さらに人類の先祖をアファール猿人の先まで遡ってもせいぜい700万年前というのが定説なのに、2億1000万年前の恐竜出現時代や5〜6億年も遡る三葉虫の化石に人間の足跡の化石があるというのは?・・真偽のほどは別として、それを説明するヒントがマイクル・クライトン "TIMELINE" にあります。

It's my belief that the study of history should be our preparation for understanding the present, rather than an escape from it.
(Elizabeth Kostova,"The Historian")

「過去を捨てた者は影をなくした男と一緒。活力のあるものは生まれない。」 (白川 静/中国文学者)

"Those who cannot remember the past are condemned to repeat it."
 (George Santayana "Reason in Common Sense")

"History is always a race between education and catastrophe." (H. G. Wells)
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「ロスノフスキイ家の娘」(ジェフリー・アーチャー)

1982年作原題 The Prodigal Daughter は直訳的には「奔放な娘」といった意味ですが、これは新約聖書にある放蕩息子(The Prodigal Son)の話にちなんだ表題です。双方の父親が宿敵として憎みあってたため、結婚後10年間それぞれの実家と絶縁状態にあった主人公夫妻が、お互い父親と和解できたエピソードが小説前半の最後にでてくるのですが、その直前のせりふに鍵があります。

"Not half as nervous as he is about meeting you. But have no fears, my dear, he's preparing the fatted calf for his prodigal son.. Have you heard anything from your father since I last spoke to you? " "No, nothing. I fear there's never going to be a fatted calf for the prodigal daughter." "Don't give up. Something may yet arise that makes him see the light."

死んだと諦めていた放蕩息子が無事帰ってきたのを喜んだ父親が、肥えた子牛 (fatted calf) を周囲にふるまった話は新約聖書ルカ第15章11節〜24節にある有名なキリストの寓話です。

この小説では主人公が生まれた1934年から神童ぶりを発揮した少女時代を経て、ハーバードのラドクリフ女子大を首席で通過、結婚で親と仲たがいしたため、ほとんど無一文から事業を興し成功をおさめ、父親の死の直前に和解に至る過程を描いた第1章(1932年〜1968年)が特に優れた作品です。

なお、ジェフリー・アーチャーには "The Eleventh Commadment" (1998) (第11番目の戒律)という小説もあります。旧約聖書のモーゼの十戒 (The Ten Commandments) の次ぎにくる戒律として、主人公 CIA 諜報員に課せられた Thou shall not be caught.(汝、敵に捕えられるなかれ)をさすのだそうです。もちろん聖書にこんな言葉はありません、軽い洒落ですが、これってセンスが良いのでしょうか、米国のスパイ小説作家ダニエル・シルバが Gabriel Allon(イスラエルMOSADの諜報員)シリーズでちゃっかり借用していました。

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『ジャック・ヒギンズでなきゃ眠れない』(内藤 陳・コメディアン)

1975年「鷲は舞い降りた」(The Eagle Has Landed)をデビューにベストセラーを重ねたジャック・ヒギンズですが、実はそれまで16年間は本名のHarry Pattersonをはじめ幾つものペンネーム (James Graham, Hugh Marlow, Martin Fallon ) を使い「鷲は舞い降りた」は36冊目の作品でした。

最初の小説 Sad Wind From The Sea (1959)は第二次大戦後のマカオから北ベトナムが舞台。そして第2作目のCry Of The Hunter (1960) がのちに定番となるIRAものですが、リーアム・デブリン (Liam Devlin) はまだ登場しません。その第2作で破滅型の主人公 マーチン・ファロンが自虐的に吐いたせりふが、当時のジャック・ヒギンズ自身の姿をを如実に語っています。

"I thought I could be a great writer, but I'm only a third-rate hack. Then, I tried the bottle, but that never solves anything."

作家として世に認められるまでの苦闘は、彼の職歴を一べつするだけで十分です。アイルランド・ベルファーストに生まれ12才まで過ごしますが、母親の再婚でヨークシャーのリーズに移り、中学卒業後15才で軍隊入りします。冷戦当時の東独国境警備に3年間勤務し、その後はサーカスの人夫、トラックの運転手、事務職、ウエイターなど昼夜の別なく働き続け、苦学でロンドン大学教育学部 (teacher-training course)を通信教育で卒業。社会学・社会心理学の学位を取得し大学講師など教職のかたわら小説を書き続けました。作家に専念できるようになったのは46才「鷲は舞い降りた」の成功からです。作品の特色はなんといってもヒギンズ節で有名なストーリー・テリングの巧みさにあるのですが、ファンをひきつけてやまないのは小説の根底に流れる強烈なヒューマニズムです。わずか200ページ程度の小説がほとんどですが、シンプルな構成の中にきらりと光るペーソスは無名時代から一貫したもので、ドストエフスキーの「貧しき人々」(Poor Folk) や「虐げられた人々」(The Insulted and the Injured)、ビクトル・ユーゴーの「レ・ミゼラブル」、さらにはフランス映画「望郷」(ペペ・ル・モコ)などに共通する感をおぼえるのは、私だけでしょうか。

映画といえば、これも古い「天井桟敷の人々」のジャン・ルイ・バローを思わせるのが、ジャック・ヒギンズ後年一連の作品で主役を演ずるショーン・ディロンです。この王立演劇アカデミー(The Royal Academy of Dramatic Art / RADA) 出身の元IRAテロリストはきゃしゃな風貌で変装の名人。表情や姿勢を変えるだけで見ている前で別人になってしまうという、ジャック・ヒギンズ究極の天才主人公です。
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「暖かな破局」

2008年1月8日の毎日新聞コラム「暖かな破局」に温暖化で琵琶湖の湖底が酸欠状態と報じられていました。冬期に酸素を含む表層の水が温暖化で沈まなくなると湖底の水との上下循環が止まり酸欠状態になるんだそうです。これが琵琶湖だけでなく、もしも地球規模で起こるとなると非常に厄介な事態になります。

現在知られているのはグリーンランド沖で北極海の冷たい海水の沈降がはじまり、それがゆっくりと大西洋・太平洋海底を巡っている。その大きな海洋循環の中にメキシコ湾流北上も乗っていて現在の北米・ヨーロッパの気象システムを維持しているというものです。地球温暖化が進んで北極海の氷が消えると、このメカニズムが崩れ、まわりまわってメキシコ湾流の北上も止まってしまう。そうなると米国北東岸からヨーロッパの大部分は寒冷化し、最悪のばあい氷河期の到来を招きかねない・・といったわけで、地球温暖化が逆に寒冷化のひきがねになりかねない可能性を指摘する学説です。

もっとも気象システムは単純なものでなく、数年毎のエル・ニーニョ現象とか、数百年周期の太陽黒点変化の影響など多くの要素が絡んでいるそうですが、同時に微妙なバランスの崩れが制御不能の変化につながる危うさも抱えているようです。クライブ・カスラーは海底トンネルでカリブ海と太平洋をつなぐことでメキシコ湾流の流れを変え、北半球の寒冷化を企てるといったスケールの大きな陰謀を "Trojan Odyssey" (2003)に書いていましたが、北米と南米大陸をつなぐあの細い紐のような中米のどこかが切れて、太平洋とつながってしまうとメキシコ湾流も消える理屈ですから・・コワーイ。

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ミステリ・ファン

映画評論家水野晴夫さんは「犯人が最初から分かっているのがサスペンス、最後まで分からないのがミステリ。」と明快に言ってましたが、映画はそう割り切って十分かも知れませんが、小説の世界ではそれほど単純でもないようです。ミステリ、サスペンス、スリラー、クライム、スパイ小説 etc., いろんな呼称がありますが、出版社、読者それぞれポイントのおきかたで呼び名が変わるといった感じです。ラドラムのようにサスペンス・ミステリと呼ぶのがふさわしいのも少なくありません。

アガサ・クリスティは探偵小説 (detective novels) とミステリを区別したわけでなく、主人公をポワロとミス・マープルに変えただけです。ポワロはジャップ刑事と現場にでかける精力的な探偵ですが、上品な老女ミス・マープルは居間に座って状況を聞くだけで、事件の謎を解いてゆく mystery unveiler を演ずるといった、それぞれ役割上のニュアンスの違いでしかありません。

パトリシア・コーンウェルは女性検死官(Medical Examiner) ケイ・スカーペッタ・シリーズのCrime novels作家として知られますが、広い意味ではやはりミステリ作家です。同じクライムのカテゴリーですが医者もののロビン・クックやロバート・ラドラムCovert-OneシリーズはBio-hazardがテーマで Medical Thrillerと呼ばれます。

アクション冒険 (Action Adventure novel) の代表クライブ・カスラーは趣味のクラシック・カーと海洋探検を舞台に歴史もののミステリ(Historical Mystery) が得意です。またスパイ、政治犯の、いわゆるPolitical Thrillerで知られるトム・クランシーはスティーブ・ピーチェニクとの共著ではじめた近未来サイバー世界をテーマにしたネット・フォース・シリーズがありますが、このジャンルは Techno-thriller とも呼ばれます。「ダビンチ・コード」で有名なダン・ブラウンの処女作 "Digital Fortress" が文字どおりテクノ・スリラーでした。

ケン・フォレット「コード・トウ・ゼロ」やロバート・ラドラム "The Ambler Warning" (2005) では主人公の記憶やIDが消された設定なので、読者はずっと深い霧の中に置かれたような状況です。霧が晴れるまでなかなか先が読めないオーソドックスなミステリの典型です。しかし記憶喪失といった小細工を使わず、複雑に入り組んだプロットで最後まで引っ張ってゆくのが同じラドラムのボーン・シリーズ (Bourne Identity /Bourne Supremacy / Bourne Ultimatum) やグレン・ミード「すべてが罠」(Web of Deceit) といった作品です。どちらのケースも途中で犯人探しを試みるのは疲れるだけですから、名手のクローズアップ・マジックを楽しむように、はらはらさせる複雑な構想とstory telling の巧みさを楽しむのが良いのでしょう。


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