【講演の概要】

1月の三日月会は国立科学博物館長,山階鳥類研究所所長の林良博先生をお迎えして、「いまどきの人と動物の関係」と題し講演していただきました。今年の干支申にちなんだ新春にふさわしい講演で、57名の皆さまにご参加いただきました。ありがとうございました。

 ダーヴィンが「種の起源」を発表してから150年以上経ち、我々ヒトと猿が高等霊長類の仲間であるということは今や常識となっています。1970年代まではテナガザル、オランウータン、チンパンジー、ゴリラなどの類人猿とヒトとは早い時期に分かれたと考えられていました。しかしDNAの解析によると、チンパンジーとヒトとは僅か2%程度の違いしかないそうです。
 ヒトは「特別な霊長類」と考えられていましたが、現在ではヒトは「類人猿の一員」あるいは「一介のチンパンジーにすぎない、しかし特別なチンパンジーである。」という考えに変わってきています。我々ヒトが、学名Homo sapiensが示すように、知性を活かして動物と平和に暮らして行くことが、「ワイルドライフマネジメント」の大きな目的であると言えるでしょう。

 さて、チンパンジーとヒトはオスが連合するという共通点があります。集団で狩りをするのですね。同じ種を殺しあうのはヒトとチンパンジーだけです。ヒトとチンパンジーが闘争的なのに反してボノボ(かつてのピグミーチンパンジー)は平和主義者です。研究者が少ないのでこの平和主義が何を起源としているのかは不明です。このことは「道徳性の起源」という本に詳しく書かれていますのでご一読ください。

「ワイルドライフマネジメント」とは言ってもたくさん問題を抱えています。動物との共生については大きく分けて二つの意見があります。「愛護派」と「撲滅派」です。「一頭たりとも殺すな」という見地に立つのが「愛護派」で、都市に住む人々が多いのに対して、「皆殺しにしろ」という見地が「撲滅派」で里山に住む人々です。里山に住む人々は野生動物により、生活被害、農林業被害、森林生態系被害のみならず、精神的被害も被っています。最近特にシカやクマの被害が増えています。また、ブラックバスやアライグマなどの外来種の被害も甚大です。林先生も森林動物との関わりの研究をずっと続けておられます。

 こういった状況の中で、いかにして野生動物と平和に共存できるかという問題が浮上しています。そのひとつの答えが「星の王子さま」の中にあると林先生はおっしゃいます。 「アプリボワゼ(apprivoiser)」という言葉です。辞書で引くと,「(動物を)飼い馴らす」「馴染みになる」「絆を結ぶ」「ねんごろになる」「こちらから働きかけて仲良くなる」「(特に精神的に)良い関係を築く」とあります。星の王子さまが、自分の星のバラ、地球のキツネ、作家のパイロット、砂漠の井戸水などとアプリボワゼすることがこの本の重要なテーマだったのです。それらは植物であったり、動物であったり、時には非生物であったりします。 ヘレンケラーと水との出会いもアプリボワゼです。皮膚感覚を総動員して、ものを「見聞き」することがアプリボワゼです。動植物だけでなく、自然界に存在するあらゆるものとアプリボワゼすることが、ワイルドライフマネジメントを豊かに発展させるキーワードかもしれません。

【以下案内文】

三日月会2016年1月新春例会は、国立科学博物館長・山階鳥類研究所長の林良博先生をお招きし、「いまどきの人と動物の関係」と題してお話しいただきます。古来人は動物たちを食用・鑑賞用・研究の対象あるいはペット(友達)として、さまざまな関係を結んできました。将来の望ましい関係を構築するために必要な視点等を、動物資源科学、獣医解剖学、人と動物の関係学をご専門として幅広く研究されてこられた林先生から、申年の新年にふさわしいお話しが聞けるものと存じます。

日  時 :2016年 1月20日(水)12:15~13:30
場  所 :関西学院大学東京丸の内キャンパス ランバスホール
千代田区丸の内1-7-12 サピアタワー10階
  3階サピアタワーオフィスロビー受付前に「三日月会受付」(11:30~12:10)を設置。
会  費:1,500円(軽食は11:45から講演前にお出しいたします。)

講  師:林 良博(はやし よしひろ)氏 
(独)国立科学博物館長・(公財)山階鳥類研究所所長
 
1946年生まれ。1969年東京大学農学部畜産獣医学科卒。
1975年東京大学大学院農学研究科獣医学博士課程修了後、東京大学助手、助教授、ハーバード大学客員研究員、コーネル大学客員助教授、ラプラタ大学客員教授などを経て、1990年東京大学農学部教授。その後、大学院農学生命科学研究科教授、総合研究博物館館長、研究科長、農学部長、副学長を歴任。
2010年より東京農業大学教授、山階鳥類研究所長。
2013年より現職。第20、21期日本学術会議会員。
内閣府「ディスカバー農山漁村の宝」有識者会議座長
著書に「ヒトと動物」「ふるさと資源の再発見」等。

タイトル : 『いまどきの人と動物の関係』

*申込締切は、1月14日(木)(締切厳守)です。
人数に制限がございますのでお早めにお申込み下さい。
なお、出席される方のみお返事を頂きますようお願いします。            

*お申し込み方法:お申し込みは締切りました。

同窓会東京支部の kg.tokyo@nifty.com へのメール返信では、申込み受付出来ませんのでご了承ください。
*お問合わせ先:東京支部  TEL 03-5224-6226  FAX 03-5224-6227   E-mail:kg.tokyo@nifty.com
【次回予告】 2月度三日月会は2月25日(木)
  講師:岡本 和久 氏(投資コンサルタント、I-Oウエルス・アドバイザーズ株式会社代表取締役社長)
  タイトル:「金遣いの王道」を予定しています。
                   以上